序章

『神歴史』より

 







 神歴史









 現代訳:イウォ・ミネルバ

 注釈:キーツァ・ルチア


















 第1章 ミナリエルの創造




 第1節



 数多ある世界の狭間はざまにある混沌より、”神”があらわれた。


 後世に呼ばれし名を”ハーヴァネイル”。


 神は初めに己が住むために、球型の世界を創った。


 神の権威の象徴である不滅の力を内包した物質のみで創られた神の住まう宮、人種が生まれた後に創られた魂を癒す街、そこは後に天界と呼ばれる場所である。


 そこは、煌々こうこうと光で満ち溢れ、尽きることのない聖水が湧き出で、神樹 (*神の力が宿っており、人界には三樹のみ存在しているとされる)が色とりどりの花を咲かせる。







 第2節



 天界を管理、守護するために創られた三柱の天使 (*現在は”原始の三天使”と呼ばれる)。


 天使らは自らの体の一部を切り離し、新たに天使を生み出した。


 天界が常に潤いのあるようにするために、彼らの行き届かないところを補うために。


 神は天使が自分の力を必要としなくなるまでを見届けると、天界と接するようにしてもう一つの球型の世界を創った。


 それは、後に下界と呼ばれるようになる世界である。


 下界の中に空気と水を創り、下界を二つに隔てる大地を浮かばせた。


 そして、大地 (*後に人界と呼ばれる)の上に植物を生やし、魔物と人種をその大地の上に創った。






 第3節



 魔物は環境に合わせて適応していった。


 例えば、ある魔物は強靭な体を、自ら以外生きることのできないような過酷な環境で生きられる特殊な体を、また圧倒的な繁殖力を、といったように。


 人種は集団を作り適応していった。


 自らが適応できず住めなかった場所を切り拓いて住めるように環境を変えていくという方法で。


 流離う者たちが、定住し村となり、それが広がり、国となっていく。


 人界の様子を見てハーヴァネイル神は最後に、繫栄した下界の反対側、大地に光を遮られ闇のみしか存在しない下界に降り立った。


 腕を一振りすれば、大地は荒れ果て、魔物、人種、長い間とどまれば天使さえ、変質し、もとにはもどれなくなる世界のひずみである毒気が集まり、充満していった。


 後に魔界と呼ばれる場所だ。


 濃厚な歪みは濃縮し、一つの化け物を生み出していく。


 それは、世界に歪みがなくならない限り永遠に生まれ続ける悪魔、彼らは荒れた大地でただ一つの餌となる同族を喰らい、生きる。






 第4節



 歪みの量が安定し悪魔が生まれる数もそれに同調するように安定した頃、魔界には13の強大な力を持った”太古の悪魔”たちが支配するようになった。


 そして、それに付き従う悪魔と共に広大な荒れ果てた土地を巡って争うようになり、飽くなき戦いが始まった。


 ハーヴァネイル神は安定した魔界や人界から姿を消し、天界に戻った。



 神が生まれ、天界、下界、人界、魔界を創り、再び天界に戻るまで、優に千年の時が過ぎてようやく、ミナリエルは現代のその姿となったのだ。


 この時代を創世そうせと言う―――





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***重要用語***

(読まなくても問題ありません)


*ミナリエル

 ハーヴァネイルが創造した世界の名前。天界、下界(下界の中に、人界、魔界がある)がある。

 下界は球の形をしており、その球を半分に割るように人界の大地が存在する。

 また、天界への扉が存在する半球の方を上層、反対の半球は魔界となっている。


*ハーヴァネイル

 この世界を創造した唯一の神。ミナリエルにおいて、神とはハーヴァネイルのみを指す。


*天使

 ハーヴァネイルが創造した”原始の三天使”から生まれた種族。天界、下界の上層の管理、下界から天界に続く扉の守護。

 なお、天使の中でも力の強い存在を『柱』で数える(どの天使から柱で数えるかについてはは割愛、今後説明がある……かも?)。


*悪魔

 魔界に住まう存在の総称。

 悪魔は世界の歪みが濃縮されることで生まれる。

 悪魔の中でも特に力の強い存在を魔王といい、魔王は『柱』で数えられる。


*歪み

 神の御業とも言われる魔法を行使する時に消費する魔力(魔法を使うための力を魔力、消費するものは魔原子、魔原子については次話に詳細あり)が摩耗したもののこと。

 なお、魔法と呼ばれる理由は、神が天使を介して魔法を伝えるまで魔法は悪魔だけが使えるものだったため。



 

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