第11話 目覚め
浮遊間で目が覚めた。眼前には以前と夢で見た、宇宙のような光の世界が広がっている。透き通るような開放感が、とても心地いい。
突然、目の前が光だした。光で視界が真っ白になりその眩しさは、普通だったら目を瞑っていても可笑しくないぐらいなのだが、何故かそう感じなかった。
そして光が徐々に弱くなり、視界がクリアになると、そこには二つの銀色の発光体が静かに存在していた。
...懐かしい感じがする...
彼らは、何も言わずただそこに存在している。それが当たり前のような感じがしてならなかった。
手を伸ばすも届きそうで届かない。この感じが何とももどかしい。
...あなたは、誰?...
そう彼らに問いかけた。だが、残念なことに返ってくるのは沈黙だった。
「!?」
次の瞬間、その答えが来た。
今度は、さらに強い発光をしたのだ。彼らは言葉の変わりに行動によってそれを示したのだ。
隼人は、自らそれに引き寄せられていることに気づいた。光に近づくごとに心地よいを通り越して、心身ともにとても気持ちが良かった。
やがて、彼らに包み込まれるように隼人は身を委ねるのだった。
ゴポポポポ ゴポ ゴポゴポ
隼人は、意識が戻りゆっくりと目開いた。すると、驚いたことに目の前には真っ裸の自分がいた。黄色い液体の入った水槽に魚の様に浮いているのだ。
ガラスの反射で自分の姿を見ると、口にはマスクが着けられていて、チューブが上に伸びている。他にも、吹き飛んだ右腕には、肩の先端に何かしらの機材が付いており、チューブが上に伸びている。気になったのは、何故か左目には小さな切り傷跡があり目はオレンジ色に光っていた。
...そうか、あの時か...
葉子を目の前で殺されて 変なロボットには追いかけられて、行き場失って最後に気を失ったのだ。
隼人は今までの出来事を振り返った。あんな悲惨なことがあったにも関わらず平常心になっているのはとても不思議だった。
ガラス越しに外を見ると、空間にびっしりと空の水槽が鎮座していた。暗闇で奥が見えないが、なんとなく奥まであるのは分かった。
「目が覚めたのですね」
何処からか女性の声がした。キョロキョとあたりを見渡すが何も感じられない。
「こちらです」
下の方から声が聞こえたので、見てみると黄色に発光しているキューブ体が宙に浮いていた。
あなたは、誰ですか?そう言おうとするもマスクのせいで口が動かない。
「大丈夫です。あなたの声はあなたの意識を通じて聞こえています。私は、次世代型AI、レインと申します」
...ど、どうも。篠崎隼人です...
「篠崎隼人さんですね。こんにちは」
...こんにちは...
「まず貴方に、感謝と謝罪をさせて下さい。私を起動して頂きありがとうございます。起動して頂けなければ、私は船もろとも破壊されていました。そして、この度このようなことに巻き込んでしまったのことに対して深くお詫びします」
...どういうこと?...
「貴方は私達、研究機関サイネリアと
...それで、母は死んだんですか?...
「はい、大変悲しい事ですがその通りです」
...そう...か......
隼人は水中でありながら目が熱くなった。近親を目の前で失うのは、初めてではないというのに。それだけ、葉子との思い出は、彼にとってかけがえのない時間でありそれが本心で幸せだったのだ。それが今表に出たのだ。
普通ここでは感情的になって、レインに対して怒鳴り散らかしているだろう。何故自分がこんな目に合わんければいけないのだと、そう問い詰めていたに違いない。だが、もうその気力はなく、苦しいけれど受け入れてしまっている自分がいた。
...貴方はいったい誰なんですか?...
苦し紛れに質問した。
「話すと少し長くなりますがよろしいですか?」
...はい、お願いします...
「そうですか、では」
レインは、これまでの経緯について説明した。要約すると、2193年人類は、AIと戦争をしていた。敵の名は
...不時着と言うより、墜落なのでは...
「幸い、あなたのお陰で
...レイヴン?...
「敵IA個体の一種です」
...何種類いるんですか?...
「現時点では5種類確認されています」
...結構多いんですね...
「いいえ。これはその一部にすぎません」
あんなのが沢山いるなんてたまったもんじゃない。隼人は、少し胸が締め付ける感覚があった。
「篠崎隼人さん、貴方に頼みたいことがございます。聞いて頂けますか」
...はい、何でしょう?...
「私と共に
...................................................はぁ?!
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