中国編
第15話 出撃
光に導かれて仮想世界から目を覚ました。前には、カバーガラスと白い天井が広がっている。起き上がると倦怠感で全身汗でびっしょりだった。しかし、体型は仮想世界で体験した逞しい体になっていた。義手も義眼も同様の者が取り付けられておりレインから聞いた話だと、この義手と義眼には神経が通っているのだとか。
...違和感もないし、触ってる感覚も温度も前と同じだ...
義手を動かしながら隼人は感心した。肉体でないが不思議と安心感がある。
突然カプセルから何か光のようなものが照射された。その光は約1分照射されたのち消きえた。すると、さっきまであった倦怠感が存在していなかったの様に体が軽くなったのだ。身体を動かすと頭もよく回るし、いつも以上に体に疲労感を感じなかった。普段引きずっていた眼精疲労も改善されて周りが前より鮮明に見えた。
「今のは最新技術を用いた疲労を改善するための治療です」
...み、未来の技術恐るべし...
「時間がありません、付いてきてください」
隼人は、レインに付いて行くと武器庫のような部屋にたどり着いた。
「ここは、ウェポンルームです。武器の装備やスーツの装着は基本的にここで行います。装備は、戦況に応じて変更できますので自分に合った各種兵装はここで選択してください。難しければ私が推奨した装備で出撃して頂いても構いません。では、装備を整えてください」
隼人は、直ぐにベクタースーツの装着に取り掛かった。
すべての工程が終了すると、レインの声がヘルメットに入った。
「気分はいかがですか?」
「問題ないよ。緊張はしてる」
「わかりました。後で緩和剤の投与もしておきますね。それではブリーフィングを開始します」
隼人の前に
「まずは、戦況報告からお伝えします」
映像が映し出したのは、高さ10000mはあるであろう、大きなキノコ雲だった。
「本日、
この事実は全世界を絶望に叩きこんだ。現在人類が保有する物の中で最も強力な兵器である"核爆弾"が通用しない相手など聞いたこともない。存在したとしても、基本的には空想上の産物に過ぎなかったのだから。
「嘘だろ」
「私達の任務は、重力兵器が投下された地点のIAの掃討、並びに世界進行を防ぐことです」
「うん」
「そして、IAの総数に関しても大凡でありますが判明しております」
「数は幾つなの?」
「約1億」
ふざけた数だ。聞いた瞬間、胸が引き締まり今にも吐き出してしまいそうになる。
「勝てるの?」
「勝算はあります」
...1億なんて日本総人口と同じくらいだろ...
「この情報はサイネリアの戦術強化兵がIA工場に潜入した際に現状の総生産数が記されたファイルから入手できました。彼らが命を賭して持ち帰った貴重な情報です」
「今はいないの?」
船に人は一人もいないことを見るとやはりそういう事なのだろう。
「今は隼人だけです」
...本当に俺だけが頼りなんだ...
「はい、その通りです。では本作戦の説明に移ります」
「今回の作戦目標は、中国の敵IA殲滅と及び拠点の制圧です。
「ちょっと待って」
「どうしましか?」
「それだけ?」
「それだけです」
「「・・・・」」
「待て待て待て!!おかしいだろ!なんだこれ、もっとさ何か計画的な作戦を期待してたんだけど、なにこの脳筋作戦!!大丈夫か、おい!」
「不服でしたか....」
レインはシュンとしたそぶりを見せた。
「うん」
「一応これでも、訓練の一環としての作戦でありますので」
「実戦を訓練なんていうの初めて聞いたわ!」
「大丈夫です。私がサポートしますの安心してください」
...逆に心配になってきたよ...
「さて、冗談はこれぐらいにして、こちらをご覧ください」
制圧区域内に赤いピンが出現した。
「これが、現在中国にある敵IAの重要拠点の配置です。隼人にはこれらの拠点を制圧、IAに関しては殲滅して頂きます」
...拠点数は5か所か多いな...
北京、上海、広州、武漢、重慶、とても広く展開している。この短期間に国の約半分を手中に収めていると考えると相手の戦力は相当な物なのだろう。
「まずは戦力の薄いで上海で肩慣らしをしましょう。隼人には上海に展開されているIAの殲滅をして頂きます。確認できた個体も量産型が殆どですし訓練には最適です」
「確認された個体は
「補給とかは?」
「現地でサプライドローンによる補給になります。兵装の変更がある場合は、事前に指示してください。こちらで用意致します」
「うん、わかった」
「では、以上でブリーフィングを終了します。初陣ではありますが気を付けていきましょう。それと最後に、貴方コールサインをお伝えします」
「コールサイン?」
「コールサインは”ネクシス1”。これがそのスーツを駆る者に対する証です」
...ネクシス1、か...
表記が消えると隼人は指示に従ってカタパルトデッキ向かう。
デッキが開き信号が灯った。
「カタパルトへ接続してください」
両足をコネクタに置くと自動で接続された。表記通りに姿勢をスキージャンプの様な姿勢を取った。
目の前の信号が3つ光った。3....2....1.....
次の瞬間全身に圧を感じながら大空に飛び出して行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます