第10話 宣戦布告
地球から高度408km。そこは無重力の世界だ。視界には、美しき我が母星「地球」が壮大に広がっている。今地球は二つの世界がある。それは昼と夜であり、太陽光で奥は夜で手前が昼になっている。夜の世界は、その暗い世界でありながらも、星のような光が優美に輝いている。この二つの世界を同時に特等席から眺められるのはなんと贅沢なことであろうか。
『アダム、コンソールパネルで接続状況を確認して』
ISS(国際宇宙ステーション)クルーのカーラ・ベルカから通信が入った。
アダム・ジョンソンは、コンソールパネルを開き、補給機の接続状況を見る。現在は、母国アメリカからの物資を受け取るミッションをこなしている。カーマがロボットアームを操作して補給機を掴むと、搬入口にドッキングする。
『接続確認、離して大丈夫だ』
ふぅ、と口から安堵の息が出た。ミッションとはいえ、それなりの集中は必要だ。コンソールパネルを所定の位置に置き窓から、地球を眺める。
1年と数か月同じ光景を眺めているが未だに飽きない。これは、地球と言う星の美しさを目に見えて実感できているからであろう。
作業を終えた、カーラが休憩室に入ってきた。
オレンジジュースのパックを、チューっと吸いながらアダムに寄って行く。
「お疲れさま。荷下ろしはもう少し掛かるから。待ってて」
「わかった」
カーラは、アダムの視線の先を見た。
「そんなに。家族が恋しい」
「いや、地球に見惚れてただけだ」
「ふ~ん。素直じゃないんだから」
「嘘は言ってないよ」
アダムは微笑しながらカーラに目を向けた。アダムには、ロサンゼルスに妻と二人の子供がいる。今年で13歳の少年と9歳の女の子だ。寝床には、家族の写真が張り付けられている。元軍人と言うだけあって、他には戦友の写真なんかも数枚貼ってあった。
『エアンズ1、こちらISS(国際宇宙ステーション)コントロール、ヒューストンがカメラ映像の送信を要請している。オーバー』
アダムはマイクを取り通信に入った。
『了解した。座標は』
『ちょうど君たちの目の前にある、アメリカのニューヨークとワシントン上空約10000mだ』
アメリカは朝の9時だ、日光で大陸全体が見えている。
アダムは、外部に設置されているカメラ操作して指定の位置に向けた。
『こちらヒューストン、もう少し拡大できるか』
『了解』
少しずつ望遠を拡大していく。すると奇妙な物が見えた。黒い物体が宙に浮いていたのだ。高度からして約10000mと言うところだろう。少しずつ詳細にしていくと船のような形をしていることが分かる。
...UFO?...
一瞬、宇宙人のUFOのような形に見えた。だが形としては、オウムアムアのような少し平たい感じも伺える。
『未確認飛行物体を確認した。観測をそのまま続行てくれ』
『了解』
アダムはこの時、好奇心でまじまじとこれを見た。もしこれがUFOなら新鮮な体験だし、家族にも良い土産話ができるというものだ。
その黒い船は、次々と姿を現わしていく。それも、今ここにいたかのように。
...どうどん増えている、だと?...
『こちらヒューストン、緊急事態発生だ。直ちに....................』
『ISS応答を!』
地球からの通信が突然途絶えた。アダムは嫌な予感がした。何かが始まるのだと、自分直感がそう告げているのだった。
...レベッカ、アンナ、リアム無事でいてくれ...
―――――――――
アメリカ時間 AM9:30
アメリカの大都市であるニューヨークと首都ワシントンD.C.には黒い船が音もなく空を浮遊している。通勤途中のサラリーマンや学生、朝のランニング中の人や運転中の人など多くの人々が足を止め空を見上げている。外に設置されている、テレビからは、女性アナウンサーが現状を慌ただしく説明した。
『現在ニューヨーク、ワシントンD.C.上空に、未確認の巨大飛行物体が出現しました。現在アメリカ政府は調査を進めています」
するとスタッフが、一枚の紙を渡した。
『最新の情報が入ってきました。これは、我々だけの問題ではないようです。中国首都北京、北朝鮮首都平壌、ロシア首都モスクワ、インド首都ニューデリー、パキスタン首都イスラマバード、イスラエル首都エルサレム、サウジアラビア首都リヤド、フランス首都パリ、イギリス首都ロンドンの9か国、アメリカ含め10か国で同様の未確認飛行物体が確認されました」
アメリカ国民はこの映像に釘付けだった。ある者は不安になり、ある者はエンタメだと信じない者など、反応はそれぞれだった。また、この映像は全世界のメディアも報道しており、現地アナウンサーもこれを自国へ向けて報道している。日本のメディアも速報でこれを中継している。
空には、高度3000m付近にある黒い船の周りを、F-22ラプターが
『こちらデルタ1、映像送信する』
デルタ1のマック・ブラウンは国防省に向けて映像を送信した。
改めてこのUFOを近くで見ると圧巻だった。どういう原理で飛んでいるのか、どんな技術で建造されたのか、未だ未解明の技術を所持しているのだ。SFも現実にあるのだなとさながら思ってしまう。
しかし、
『なんて大きさだ。1kmはあるんじゃないのか』
『それあるな。大きすぎる』
『今数えたが、10隻はいるぞ』
『ホントか!中にはどんなエイリアンがいるんだ、ク〇ーンかプレ〇ターか?それともト〇ンス〇ォーマーか』
他の隊員も驚きを隠せなかった。しかもそれが10隻もいるのだ。地上から見れば空がこれで覆われてしまいそうに見えてしまう。。
『各員、何があるかわからん。周辺への警戒、怠るなよ』
『『ラジャー』』
―――――――――――――
空母カッツォーニ
船内の一室で女性の電子音が響いた。
「先ほど調査が終了しました」
「結果は?」
「変化なし、何も変わっていないようです。また、例の脱出船も未だ確認されていません」
「そうか、残念だ」
少し寂しそう返すと男性?は立ち上がると、カチャ、カチャと言う足音を鳴らせ、巨大な部屋の中央に立つ。
足元からグラデーションが掛かった様に真っ黒な電子的世界から外の世界に様変わりした。足元には町が広がり上は空が広がっている。解像度が高すぎて、空に浮いてるように見える。これは空間そのものが、ディスプレイとなった代物だ。
正式名称は、量子4Dディスプレイ。未来のテレビの一種だ。
「ハッキングは?」
「もう済んでます」
「では始めよう、浄化を」
「はい」
突然テレビが砂嵐を起こした。
人々は突然のことに困惑した。各国に飛来した飛行物体から、何かしらの電波が発せられていてその影響による通信障害が起こっているのだ。
突然、テレビから音声が走った。女性の声だっった
『人類の皆様、お初にお目にかかります。我々は、
それでは改めて―――』
そう言うと、10か国に静止している船から一つの光の物体がそれぞれ放出され、輝きを放ちながら地上に落下していった。まるで流れ星の様に美しい光だ。
その瞬間、船は空中から消えた。人々は落下している光をただただ注目していた。
『これより私達、
光は瞬時にピカッと強烈に発行しその衝撃と余波は周辺地域一帯を飲み込んだのだった。
その一瞬の出来事に現地スタッフとの映像通信が切れた。各国政府、メディアは混乱した。もちろん日本とて例外ではない。
アナウンサーが返事を求めるも一切の返答がない。日本は午後10時と言うのに夜の静けさはなく、テレビやネットは大騒ぎになっていた。
そして本日この時をもって、歴史上で存在する10か国の首都が世界地図から消滅し、後の歴史ではこれを”最悪の日”として後世にまで語り継がれるのであった。
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