第21話 武漢攻略編/好奇心


 

 思春期


 それは12歳から18歳までに起こる身心の成長期間である。この時期になると男女問わず様々な変化を体験することになる。

 男子であれば体に筋肉が着きやすくなり女子であれば丸みを帯びた女性的な体型に成長する。性格も様々な経験から変化し個性的になっていくのだ。各々がそれを気にしながら生活する中で、やはり一番わかりやすい変化は体型だろう。

 

 自分の体型を気にするようになると、他人と比較してしまうのも仕方がない事だ。

これは、男女問わずそうだろう。


 カプセルの中で隼人は自分の体見た。逞しくなった体に多少の戸惑いはあるも、今となってはそれも落ち着きつつある。


 ただ一点を覗いて、

  

 カプセル内で下半身に覚えのない妙な違和感に気づき目線を下げた。


 「!?」


 ...ナニが小銃から大砲に進化してるーー!!...


 どう見ても倍以上ある大きさへと変貌していた。今まで目の前の事で一杯で全然気づかなかったのだ。


 ...ちょっと待て落ち着け俺、状況を整理しよう...


 マスク越しに大きく深呼吸して思考をフル回転させた。


 ...我が愚息とは身体が変わる前から、共に自らを高めあってきた仲なのだ(深い意味)。そう簡単に忘れるはずがない。しかし、ライフルマンが訓練なしで砲手にジョブチェンジするなんて聞いたことがない...


 しかし隼人の思考にふと何かがよぎった。


 ...待てよおい、まさかってそこまでやるのか...


 それは仮想世界で訓練した際に入ったカプセルだ。体を改造し身体機能を向上させることができると言っていた。てっきり戦闘系に特化したものになると思っていたのだが、こっちもそれに合わせて戦闘系になっていたのだ。

 

 だけど、


 ...戦う相手がいなかったら、訓練で終わってしまうじゃないか...


 今のところ相手は右手か左手だ。だがこれはあくまで訓練相手だ。実戦は未経験だ。そんな人がいたら会いたいものだ。


 ...何かありましたか?...


 ...それがさぁ...


 レインの声が聞こえたので振り向くと水槽の外に、純白の肌に金髪の美女が立っていた。


 しかも真っ裸で、


 ...きゃーーー!...


身体を抱えるように体を隠した。


 ...ななななななな...


 彼女はこちらに歩み寄るとガラス越しに首を傾げて不思議そうに問いた。

 

 ...どうしましたか?...


 ...いや、隠せよ!つか何で裸なんだよ!...


 レインは自分の体を見ると言われた通り手で覆った。


 ...きゃー...


 レインは棒読みにわざとらしい反応で身体を捻らせた。


 ...早く服着ろ!それまで後ろ向いてるから...


 私は別に構いませんが、と言ってるが自分かしたら目の毒だった。普通ならまずお目にかかることはないだろう、絶世の美女なのだから。堀の深い顔立ちに、内側にしっかりと付いた筋肉をベースとして、そこに程よく乗った脂肪はメリハリの在りすぎる体型を作り出していた。


 ...もう大丈夫ですよ...


 振り向くと、この前軍服の女性アバターがいた。


...最終的な健康診断は、データではなく直接状態を見て判断します...


 ...なら、裸になる必要ないんじゃないのか...


 やっとかと、全身から力が一気に抜けた。だがそれがいけなかった。突如下半身の違和感に気づいた。それに気づくと隼人は赤面して体を抱きしめるように縮こまった。


...海綿体の膨張を確認。健康な証拠です、安心しました、身体機能は正常なようですね...


...もう殺してくれ...


勇人は死にたくなった。



 





 「ブリーフィングを始めます」


 「広州の拠点を陥落させたことで、一定地域における制空権が確保できました。これで、本作戦での活動が優位に運ぶものと思われます。今回の作戦目標は、武漢の拠点です。前回のようなレーザーによる強力な対地対空防衛システムは見受けられませんが、パルスレーザーによる複数の迎撃システムが確認されています。これを突破し目標を破壊して下さい」


 表示から小さい砲台が幾つも設置されている。砲台の形は四角系だ。


 「レーザーを発射するのに砲身は必要ありませんからね」


 ...早速心読まれた...


 「また新たに型式番号N-10、サイクロプスを確認しています」


 説明と映像が表示されたので、目を通してみると驚くべくき内容が記されていた。


 「全長25mの巨大人型IA。武装はビームライフルに光粒子剣フォトンソードです」


 画像から人間がとてもちっぽけに見えるのは、それだけの巨大さを象徴している。

 しかし、これだけ大きいと動きが相当遅いだろう。その分火力で押すタイプだと思う。


 「ただ、大きいからと言って侮ってはいけません。大型IAには反重力エネルギーが確認されています。故に、現代における重量の問題は解決されています。無重力、重力下関係なく高機動戦闘が可能です」


 その情報に隼人は耳を疑った。倒しようがないじゃないかと。行ってしまえば、戦車が空中飛び回って攻撃してくようなものなのだ。


 「対処方法はEMPグレネードで動きを鈍らせ、装甲の薄い関節、もしくは首元の薄い装甲に攻撃を加えれば破壊できます」


 「ただし箇所によっては、被弾効果が薄い可能性があります。なので、同じ場所に2回以上攻撃を命中させて下さい」


 そ事前にレインから推奨された兵装を装備している。

 ロケットランチャー2つに、強化型EMPグレネードと対サイクロプス用のロードアウトになっている。


 「またその他、多数のIAを確認しています。総数は約214体」



 「ブリーフィングは以上になりますが、何か質問はありますか?」


 隼人は手を挙げた。


 「なんでさっき裸だったの?」


 今でもあの光景が頭から離れない。

だがAIの考えることだ、何か相応の理由でもあるのだろうと思った。


 「知りたいですか?」


 「知りたい」


 レインは少し間を開けるとこう告げた。


 「私の好奇心です」 


 ...俺の純情弄ばれたゼ、コンチクショウ!!...








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