第22話 武漢攻略編/巨人サイクロプス襲来
空から武漢の街並みを視界に捉えた。
拠点まで10㎞を過ぎた所で視界にピンが大量に出現。殆どSN-1を中心とした小型タイプ郡が占めているようだ。
確か110体位だったはずだ。今までと比べれば少ない方だろう。
...行くか...
隼人は加速を掛けて、敵陣に真正面から突っ込んだ。
向こう側も接近する熱源を感知したようで、迎撃行動に入り多数の光線、実弾が飛んできた。
「あれをやってみるか」
ここで隼人は避けずに加速した。加速される粒子量が数倍に跳ね上がり、瞬きすら許さない速さで掻い潜る。一旦通り過ぎたあと、身を捻って反転、
...これが
移動距離は短いがその間は極超音速を優に凌ぐ移動が可能であり、敵陣を突破するし際に有効な機能だ。
「普通にやるのはなしだ!」
教本通りの使い方でやるのは最初だけ。なぜなら、これが解除されたときレインが言っていた。
” 物は応用してこそ性能が発揮できるのです "と。
戦場において想定通りと言うのはまず想定しない。質をメインとした戦闘法を用いる戦術強化兵が戦場で一番大事なのは生存率だ。その生存率を大きく左右するのは知識の汎用性とその応用。ある程度の知識と訓練は必要であるが、それを身に着けた状態で各々が自由に行動できるよう指導がされる。なぜならそれぞれの役職、配置があるにせよ、型にハマれば応用が利くのに時間が掛かる。それが生死を定める。過去のデータがそれを物語っていた。
「大丈夫、できるさ」
隼人は自分が思いつく限りの事を試した。最初は単調な動きからは始まり、少し慣れたら、フェイントを混ぜた挙動で翻弄し一撃で仕留めたり、射撃しながら加速し格闘戦を仕掛けるなどなど。気付いた時には敵IAは全滅していた。
『敵IAの撃破確認』
幸い、ロケットランチャーを使用せずに乗り切れたのは嬉しかった。
『サプライドローン接近中』
上から降りてきたサプライドローから補給を受けると、目標地点に直行した。
拠点まで約5㎞を切った。隼人は周辺警戒をしつつ街中を駆け抜けた。
『何かがおかしいですね』
「ん・・・?」
隼人はレインの言葉に足を止めた。が、「止まってはいけません」と指摘されホバーで移動を再開した。
『静かです』
確かに気持ち悪いくらい静かだ。
しかしこの感覚には身に覚えがある。それは初出撃の時、戦場とは思えない程静かで不気味だったのを今でも覚えている。視界に広がるのは崩壊した街並みだけだ。
....レーダーの反応はなしか...
『ネクシス1、注意して下さい。何かあります』
「うん、気を付けr」
ドカーーン!!!
急な爆発。それは左手の大きいマンションで起こった。
「!!」
崩れ落ちなが巻き上がる粉塵は隼人をも巻き込み、倒壊していく。
「クソ」
離脱するために後方へ大地を蹴った。
最中に煙の中で、隼人はある物を見た。真っ黒い何かだ。粉塵をかき分けそれは自分と目の鼻の先にまで到達し、気付いた時、吸い込まれるように視界が黒一色で染まっていた。
次の瞬間、隼人は人生で経験したことないほどの衝撃と共に意識を失った。
~~~~~~~~~
レインは艦の映像から吹き飛ばされる隼人を見た。ホームランバッターがスタンドへ弾丸の如く放った打球の様に高層ビルを貫通し2棟目で止まった。
発射元から漆黒の巨人が姿を現していた。足を振り上げている様子から隼人は蹴り飛ばされたという事だろう。
サイクロプス。全長25mの巨体は離れていても圧倒時存在感を見せていた。
そして今まで疑問だったレーダーに反応がない理由が分かった。
光学バリアだ。
光学バリアとは21世紀半ばに開発された装備の一つ。光学迷彩マントを発展させたもので多彩な分野で活躍したと言われている。特に諜報、調査活動で重宝されたらしい。
サイクロプスが動いた。勿論目標は隼人だ。浮遊し、そして今にも攻撃を仕掛けようとしていた。
『そうはさせません』
~~~~~~~~~~~~~
『生命反応の低下を確認。緊急生命維持システム起動します』
アナウンスと共に体に電気ショックが走った。
「かはっ」
体に火が入る感覚で目が覚めた。息を強引に吸い込むと、口に溜まった血も一緒に吸い込み、噎せた。視界が歪んで焦点が合わない。
....ハァ....ハァ....ハァ...ここは一体どこだ...
天国か地獄か頭に浮かんだが、どうやらそうではないらしい。
少しずつ焦点が合ってくると天井が見えた。聴覚も回復し耳からはうるさいぐらいの
『警告、大型IAを検知しました、直ぐにその場を離れてください』
なんだ?と窓側に目を向けると何かが突っ込んで来るのを見た。
「まず!」
部屋に巨大な拳が叩き込まれた。
今の衝撃で部屋さらに破壊されて、原形をとどめていなかった。索敵スキャンで覗きこむように確認する。だが、生命反応検知されず。そして、解析から敵の死体が見当たらないことに気づいたのだ。
ドン!
頭が右に大きく揺れた。それも衝撃によるものだ。
攻撃を受けた先に視線を向けると殺したはずの敵がいた。ランチャーを構えて、銃口をこちらに向けていたのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あっぶねぇー!!」
隼人は殴りこまれた拳を見た。
...ミンチになるとこだった...
拳が当たる直前、粒子スラスターで壁を突き破り隣の部屋へ移動したのだ。予備動作なしで動いたので少し倦怠感を感じるがそれは仕方がない。幸い壁が薄かったので、ダメージを追うことはなかった。
「オェッ、気持ち悪りぃ」
『仮死状態から蘇生して数秒ほどしか経過していません。時期に回復します』
多少は我慢が必要だ。慣れるしかない。
追撃を避けるために部屋を飛び出し、隼人は自分を吹っ飛ばした元凶を見た。
「なんだこのデカさは」
お台場の白き一角獣よりも一回り大きく見える。映像で見るのと実物はやはり迫力が違った。同時に怖気づくような気持ちもセットで舞い込んできた。
...まだ、動いてない。今なら...
想いを振り切り、両手にロケットランチャーを
着弾。
「しまった、ミスった」
発射前に手元がぶれた感覚があった。
煙から見えてきたのは、損傷一つない装甲になんともない様子を浮かべた、モノアイだ。
「まじかよ」
多少の手ごたえはあった。だが、それを裏切る光景が目の前にあった。
「!?」
左足の粒子スラスターを噴かして、側転の要領で回避行動を取った。
直後、ビームが空中に走った。
隼人はその場から離れて
回避行動を取りながら、隼人も反撃をする。
目標は関節部だ。だが、最低でも1発、2発目は確実当てなけば破壊できない。
的は大きいがそう簡単に当てさせてはくれはしない。
隼人は空中戦に持ち込むも、勢いが凄まじく引き金を引くよりも回避が優先されてしまう。
...クソ、大きいのに何で当たらない...
大型に似つかわしくないその機動力は、隼人を追い詰めていく。
回避行動を取りつつこちらもロケットランチャーで牽制しながら、戦場を市街地に移した。
地面に一度着地し前傾姿勢になると前方へ両足に溜を作り一気に加速する。
直後隼人は背後から降りかかる水色の光柱を見た。
...
人間一人余裕で覆い尽くせる太さだ。
両足を前に伸ばしてバックステップを踏み回避。
振り下ろされた後は、コンクリートを溶解し地面を深々と抉った。
上方しつつ弧を描きながらロケットランチャーを連射していく。
『ネクシス1、残弾に注意を』
表示を見ると、全弾が残り3割を切っていた。
予想以上に減るのが早かった。弾薬マネジメントは戦場で生き残るために必要なことだ。それを怠れば、生き残る選択肢を減らす要因に他ならない。
....他に武器は....
実際、ヴァリアブルライフルでも十分対抗できるのだが、それは最後の手段だ。
スキャンに反応があった。それは
『カール・MK2を確認』
対象物に向かって動きは止めず、残骸ごと蹴り飛ばし宙に浮いた所を右手で掴み取った。
頭を下に180度前中し、構えた。
『認証登録解除、撃てます』
放たれたロケットは大気を円柱状尾を引く様に歪めて飛翔した。
しかし、着弾の直前奴の姿が消えた。
反応は右手からだった。振り向くと拳が隼人の全身を強打した。
「ぐはっ!」
勢いで横のマンションに突っ込み、一瞬意識が飛んだ。が、それは生命維持システムですぐに現実に呼び戻される。
反対側に突き抜け、身体を捻りながら全身でブレーキ踏んだ。
後から突き破って姿を現したサイクロプスは、
...押し切られる....
奥にあったのは”死,,と言う単語。この時、隼人の思考は一度止まった。その代わり衝動的に内からこみ上げるものがあった。それは生存本能。動物に生まれながらに持つそれが、隼人の体を動かした。
右足を引き上げながら左足で地面を蹴り、
「こんなところで死んでたまるかーーーー!!」
意識が復活すると、カール・MK-2拾い上げ、ウェポンアームに保持されたロケットランチャーと共に即座に構えた。 3つのレクティルが重なった。
「左腕貰った!」
3つのレクティルが重なった。引き金を引く。それに合わせて、ロケットランチャーも
放たれたカール・MK-2の弾頭は、肘の外部装甲を貫通し、肘に着弾。そこへ、2発のロケットが連続で命中した。
保護装甲とフレームが破壊され、関節が吹き飛んだ。
「逃がすかよ」
ゲージが上昇するのを確認すると中腰になり、準備は整った。
『粒子スラスター限界領域到達』
「突っ込むぞ!」
隼人は左腰部の強化型EMPグレネードを発射した。変則的な軌道を描きながら接近する。が、それは着弾直前で破壊されてしまった。だが、それでいい。
破壊されると光がはじけた。夜空の星の様に光り輝く粒子が
強化型EMPグレネードは、破壊されてもその効力が周囲へ拡散するよう設計されている。故に、迎撃したとしても効果範囲内であれば効力を発揮する。
それに巻き込まれた
加速をつけて、頭を後ろに足を上に蹴り上げる。地面に対して平行の体勢を保ちつつ、通過する股関節に向けて3発同時に撃ち込んだ。
被弾元から内部爆発が連鎖し、最後は頭部に到達した。股関節から力を失った
『反応消失確認、お見事です』
「今回は本当にヤバかった」
本当にもう少し、時間がかかっていたら本当に死んでいたかもしれない。
特に建物からの不意打ちは予想が着かなかった。やはり、このスーツがどれだけ頑丈に作られてるか、身をもって隼人は知った。
「よし、これで任務完了だな」
『サプライドローン接近中』
「?」
サプライドローンで補給が行われる最中、爆発音が所々で響いた。
『ネクシス1、浮かれてはいけません』
崩れ行く建物から、姿を現したのは漆黒の巨人だった。
レーダーからも戦闘空域に次々と侵入してくる反応を検知した。
『まだ、一体目を倒したにすぎません。まだ来ます、総数150。交戦準備、願います』
...ハハハ。これ本当に死ぬかもしんないな...
補給が完了すると、隼人は重い足取りで位置に着いたのだった。
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