プロローグ 4

  空母ラビロン内 統合管制室ブリッジ


 『エコー隊、発艦完了しました』


 「了解、入港口付近にはクライム隊から10名が守備する。それ以外のリキッド隊、クライム隊を増援として向かわせる」

  

 『了解』


 空母ラビロン。全長970mにも及ぶ、連合軍が製造した戦略空母である。

AI戦争時に急遽製造されていたものの、完成とほぼ同時期に戦争が終結してしまい長く眠りについていたが10年前になんとか見つけ出すことに成功し、現在サイネリアの拠点として運用されている。

 

 「出現まで後60秒」

 「核パルスエンジン出力上昇」

 「射出シークエンス開始まであと残り5分」


 統合管制室ブリッジは、オペレーターの声で慌ただしくなっていた。

泰彦も入室するとすぐさま、自分の所定の位置に着いた。


 「出発まで後どれくらいかかりますか?」


 「約5分はかかります」


 「急いでください」

  

 「局長、移動拠点先の施設内部のカメラと繋がりました」


 一部の通信設備が生きていたのか奇跡的に繋がることができた。

 目の前の大型液晶画面モニターに、内部映像が表示された。そこには血だらけの施設内の映像、無残に仲間の死体がそこら中に転がっていた。中には原型を留めていないのもあった。別のカメラに、切り替わると目の前に見知った顔があった。目には力がなくぐったりとこちらを見ていた。


 ......ミハイルさん


 康彦の同僚、ミハイル・アンダーソン。サイネリアの研究員の一人で今回、向こう側で泰彦達を待っていた。会う予定だった人。良く下手な洒落言う人だったが、人望の厚い方で特に若者には人気があった。


 「そんな...」


 一部の人達は悲しみのあまり、涙を流していた。


「残りあと20秒で接敵します」


 仲間の死を悲しむ時間もないまま、恐怖が目の前まで来ていた。次はお前たちだと、言わんばかりに、



カウントダウンは始まった...



「出現まで、10...9...8......


 今この耐えうる数秒にどれだけの人間が神に祈ったのか。願ったのだろうか。


 ...私は神に願えば、祈れば何かが解決できるとは思ってはいない。しかし、自分を信じない物を神は救ってくれるのだろうか。だから、私は自分を信じる。そして仲間を信じる。我々を、人類を信じて...


...3...2...1...来ます!」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





 レーダーに200体の信号が出現した。IAイクス・アームズ人類の敵。目の前にそれがいた。

 雲にの中から薄っすらと、縦と横に微動だにせず整列している。真ん中にはひと際大きな個体がある。XN-1Hクシフォス。小型タイプを指揮している指揮官機である。その周りにSN-1レイヴンSN-1FレイヴンFがずらりと並んでいた。黒い体に赤いモノアイ。人の形をした、悪魔のロボット。

  

 各部隊は、即座に編隊を組み、所定の位置に移動する。


 クライム隊とリキッド隊を前衛として後衛にエコー隊、空中管制艇フラッド1の順に配置に着いた。


 「敵機確認。各部隊、配置につきました」

 

 『全機、ランチャー、スタンバイ!』


 指示と同時に、各員はそれぞれ背部のミサイルランチャーを展開する。


 『撃て!』


 宗一郎の命令と同時に、一斉にミサイルランチャーを放った。大量のミサイル郡はそのまIAイクス・アームズに向かって一直線に飛翔する。


『着弾まで、3,2,1、今!』


 重い轟音とともに遠方で爆発が起きた。空気が震え、雲が波打ち、着弾地点を中心に青空が見えた。空間振動で体勢が崩れそうになるのを何とかこらえる。


 爆発はあまりの眩しから、対閃光モードでも目を細めてしまった。


 『目標命中を確認』


 爆破による閃光が徐々に弱まり、レーダーが回復する。


 『いやまて...』


 オペレーターが急に動揺し始める。爆心地点をカメラで拡大すると、遠方に黒い影がうっすらと見えてしまった。


 おい、まさか...


 『敵健在!全機無傷だ!』


 なんと、レーダーにもIA200体が確認できた。


 クソッタレ!最悪だ!一番予想したくないことが的中してしまった。


 『バカな!拠点制圧用の高性能炸裂弾だぞ!』

 『ありえねぇ...』

 『嘘だろ!』


 他の奴も驚愕している。当然だ、巡航ミサイル約300発分に相当する威力が無効化されたのだ。


 驚いてるのもつかの間に、アラートが鳴った。


 『敵接近!ミサイル!』

 

 レーダーからSN-1レイヴンSN-1FレイヴンFが高速でこちらに接近している。そして、今度はこちら側に向かって大量のミサイルと弾丸が飛翔してきた。

 

 『散開!』


 言われるまでもなく、瞬時に体が動いた。危機察知が早いだけでも、生存率は上がる。回避行動取りつつミサイルを迎撃する。ここまではいい。問題は次だ、これをおとりにして、爆煙の中からSN-1レイヴンが紅いのモノアイを光らせながら突っ込んできた。


「エコー2、エンゲージ!」


 足を前に出し脚部スラスターを急激に噴射し、後退しつつAG5で迎撃する。


『クライム1、エンゲージ』

『リキッド7、エンゲージ』


 耳元でそれぞれ接敵するのを確認するとすぐさま左側に進路をとった。そしてすぐに目の前のレイヴンをスキャンする。相手も手にはAG5が握られていた。銃口がこちらに向くと同時に発砲してきた。すぐに、背部スラスターを吹かしブレーキをかける。その反動を利用し、空中でバク転をして回避する。そして、再度スラスターを吹かし背後から追撃をかけた。


 ...目標、ロック!


 だが、すぐに照準を定め引き金を引くも、見事に回避されてしまう。


『敵接近』


 急に警告音アラートが鳴った。レーダーによると上からだ。しかも、レイヴンよりも高速で接近している。発信元から白い光の雨が降ってきた。多少のかすりはするものの、回避行動をとる。被弾面を解析するとすぐに判明した。間違いない、これはビームだ。

 

......ビームライフルか、やっかいだな.......


 威力は低いものの、当たり所によっては致命傷になりかねない。

 しかも保有しているのはSN-1FレイヴンF。間合いを詰められたら一瞬で持ってかれる。反撃しつつ回避行動をするもいつの間にかに距離50mまで詰められてしまった。


 しまった!あれが来る!


 そう思った瞬間、SN-1レイヴンSN-1FレイヴンFの右上から何かが空気を歪ませながらが貫通した。発射元を見ると、そこにはレールガンを抱えた戦術強化兵がいた。

 

 胸部の花のエンブレムからして、うちの部隊エコー隊の隊長さんだ。


 「エコー2。しっかりしろ!」


 「助かりました」


 軽めの返答するも、内心は肝が冷えた。


 「各員、F型に接近させるなよ!敵はそこら中にいる。よそ見するなよ!」


 『『了解 』』


 ライフルをリロードし再度迎撃行動に入る。


 『敵接近、方位220、接近数30、敵残存数157』


 警告音アラートの示す方角を見ると、SN-1FレイヴンFが接近していた。

 右ウェポンアームからロケットランチャーを受け取ると、弾頭を3連続発射した。

 飛翔し一定の距離になると、カバーが外れ弾頭からマイクロミサイルが発射された。ミサイル郡は、その誘導性能の高さから次々とIA《イクス・アームズ》に着弾していった。


『着弾確認。大破7。中破9』


「ちっ」


 しかし、相手の方が連動が上なのか、数発は命中するも殆どはミサイル郡をかいくぐり、とてつもない勢いで接近してくる。


...なるほど、空戦装備か...


 ライモンはすぐに、散らばった付近の部隊員に通信をとる。

 反応があるのはエコー4、エコー6。アナスタシアとリュウだ.


 『エコー4、エコー6。そこら辺にいるか。応答しろ』


 『こちらエコー4、聞こえます』


 『エコー7、何とか生きてます』


 『編隊エレメントを組む。数で押すぞ!』


 『『了解』』』


 ライモンを先頭として二人は後ろに着いた。そして3人はスラスターを噴射しIAイクス・アームズ達に、向かっていった


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