第19話 広州攻略/ワン・オフ・ソルジャー
上海の戦闘から約3日がたった。
戦闘後はしばらく治療カプセルで過ごしていた。船内にいる時間は、基本的に寝ている。時間が経過し身体の怪我はほぼ完治しても、独特の浮遊感が余りにも気持ちが良くて体を預けるように眠ってしまっていた。全身に柔らかい毛布でくるまれているかのような感覚が癖になる。
だがそんな、至福の時間は長くは続くかなかった。
ピピピッ
唐突なアラームが脳内に響いて目が覚めた。全身を使って身体を伸ばすと内部のタッチパネルを操作して脱水を選択、排水口から液体が徐々に減っていく。足が床に着くと、治療カプセルのロックが解除され扉が開いた。心身ともにスッキリすると脇にかけてある服に着替えて、軽い足取りでVR訓練室に向かった。
『VRシュミレーションを開始します。モードを選択してください』
仮想
...さて、どれにするか...
前回の戦闘データから新たに
むしろ悩んだ。今の自分に何が足りないのだろうか、近接戦能力か空間認識能力なのか、それとも単純に体力か?指で数えても足りないぐらいで、考えてもきりがない。こなさなければいけない、タスクが多すぎて頭がパンクしそうだ。
...多分全部だよな~...
「結局、俺は数をこなさなきゃ勝てないか」
自分の実力不足さを感じつつ、直感で訓練相手に
『仮想
隼人の目の前に
隼人はオプションに、背部10連装ミサイルポッド2つ装備し火力重視のスタイルで設定する。
「さて、朝練に付き合ってもらうぞ」
そして1時間に及ぶ朝練が始まった。
数時間後
朝練で200体近くのIAを相手にした隼人に出撃命令が下った。訓練の成果を試すには良いタイミングだ。
「ブリーフィングを始めます」
「作戦目標は広州市内に建造された拠点です。現在判明しているのは従来の転送装置が設置されていることが分かりました。これを破壊すればまた特徴として拠点を覆う2層構造の防壁と周辺を囲むように配置された4台のレーザー砲台です」
転送装置は文字通りIAを転送する装置であり、常時IAがここから戦場に送り出される。拠点とはいわばこれを守るための鎧のようなものなのだ。
「初めに拠点の北、西、東にかけてミサイルによる陽動をかけます。その間に隼人は反対方向から強襲してこれを破壊してください」
広州市は、中国の南側に位置する海沿いの都市で付近には香港が位置している。画像から都市部を中心に拠点を四方から囲うようにしてレーザー砲台が高くそびえ立っている。拠点も以前よりも増して巨大で3階建てのショッピングモールのような大きさだ。
「確認されているレーザーは、RA-12と言う対空防衛システムの一種です。未来では通常の対空兵装ですが現代からすればオーバーテクノロジーですね。配備数は少ないですが命中精度はレーザーでありますから照射速度は光速です。
なので捉えられた際は全力で回避して下さい。出力も比較的高い部類に該当しますので警戒して接近してください」
「わかった」
たしかに簡単に接近できないだろう。前回の戦闘でも拠点に近づくにつれてIAの数が増えていくことがわかった。今回も同様に拠点周辺にはIAが展開されているのは予想が着く。
「途中のIA抵抗が予想されますがそのまま無視して構いません。IA軍を突破し防壁を破壊しないと中の転送装置にたどり着くことはできません。こちらで対応できる兵装を用意致しました」
映し出されたのは、自分の身長より2倍以上はあるであろう、砲塔のようなものだった。
「こちらは戦術強化兵仕様に調整した大型滑降砲になります。本作戦では貫通力のある高速徹甲弾を用意しました」
「結構大きいんだな~」
「重量はありますが、スーツの性能で十分にカバーできます。これを1㎞圏内から発射すれば防壁は破壊可能です。そして内部へ侵入し転送措置を破壊してください」
「了解。てか、破壊でいいの?ほら、情報とか抜き取ったりとかさ」
「転送位置は大まかでありますが把握しています」
「どこから?」
「
「え?ってことは」
まさかなと、隼人は指を上に向けた。
「そうです。IAは周回軌道上の艦を通して地上に来ています。座標は光学バリアで不明ですが、その地点からの転送は分析で明らかになっています」
「どう対処するの?」
「我が艦と衛星で敵量子コンピュータの処理速度を著しく低下させているので、転送に相当な時間が掛かっているはずです。本来ならば今現在地球の4分の1は火の海ですから」
「・・・」
ギュッと握りこぶしに力が入った。
「時間になりました。これでブリーフィングを終了します。隼人行きましょう」
「うん」
眼前には、上には青々とした空が下には雲海が広がっている。
....3...2....1.....
『出します』
「行くぞ!」
発艦すると隼人は戦場へ降下を始めた。
雲海に潜ると全方位が白色とグレーで覆われて何にも見えない。地上までのガイドに従って、徐々に高度を下げていく。
雲海から抜け、遠方に拠点が見えた。映像で見るよりも圧倒的に大きく強固な質感が肌で感じる。
ふと遠方より何かが光ったように見えた。
「ん?」
甲高い
咄嗟に折り畳みシールドを展開し回避行動をとった。
直後真横を光柱が通過した。照射されたレーザーは徐々に照準を隼人を追うように合わせる。こちらも逃げるように避ける。
「クソ!」
隼人は前進をやめることなく、回避時にはステップブーストを駆使して加速する。
レーザーの照準は考えられない程精度が良い。回避した後にはもう照準が自分に向いている。システムが射線軸を表示してくれるおかげで回避できているが、それでもギリギリだ。そして
『香港上陸まで残り3㎞です』
突然の
『警告、レーザーの準照射を確認。照射源3』
増えたか、そう吐き捨てると3つの光源がこちらに向いているのに気付いた。準照射なため、まだ回避の余地がある。
その場から退避すると、三つの焦点が重なるようにレーザーが放たれた。
とにかく今は地上に移って射線を遮るところに移らなければならない。さらに、こっちは大型滑降砲を装備しているだけあって機動力は若干低下している。なので安全に行きたいところだ。
...くッ!こりゃ下に降りるしかないか...
正面突破を諦め隼人は射線から逃れるために、頭を下にして急降下を始める。
...600......400.........200....100...今!...
両足で急速ブレーキを掛けると同時にメインスラスターで前に加速し海上すれすれを行く。高度を下げた故に撃射線が通らないのでさすがには撃ってこない。この隙に一気に距離を詰めたい。
『警告多数のIAが接近中、総数約200』
そうはさせないと言わんばかりに大陸側からIAが出動しこちらに接近している。
隼人は加速して防衛網を搔い潜り目の前で加速を掛けて一気に抜き去った。
『敵IAがこちらを追尾しています』
だが加速性能はこっちが圧倒的に上だ。力任せにIAを振り切ると、目の前に香港が見えた。なるべく低く飛行し橋の下を通過し川に沿って進んでいく。途中数体IAを確認したが無視して目標を目指した。
一瞬、周辺視野に閃光が見えた。
瞬間、目の前に左斜めにレーザーが遮るようにして出現した。
「な!」
突発的な出来事に驚きながらも隼人は眼前の光柱をジャンプして躱す。
しかし、レーザーは建物を溶断して隼人を追ってくる。
隼人は粒子スラスター全開で川を突き進んだ。前方のカーブに差し掛かる前に、曲がる姿勢を取った。
『ネクシス1、前方に注意を』
今度はビルを破壊して前からレーザーが襲ってきた。ステップブーストで右斜め前に飛び、壁を蹴って回避する。
『ネクシス1、多数のIAが接近中です』
レーダーで倒壊したビルの後ろから30体以上の
隼人は多連連装ミサイルをトッポアタックで発射した。殆どの命中を確認するとカーブを無視して、前方の開いた空間を走る。
残り2体を見た。片方は被弾して手首がないのに対し、もう片方は片足を損傷している。
隼人は機動力の低い片足の奴の頭部をレーザーで打ち抜き、実体剣で襲ってきたもう片方の奴は、
前なら誘導性が低く打ち漏らしが出ていたが、殆どのミサイルが直撃コースで着弾したのは嬉しい事だ。
レーダーで拠点間との距離を計測し、射程範囲まで接近する。
広場のようなところで、ようやく拠点を視界にとらえた。幸いにもレーザー砲台の真下に位置しているので、レーザー照射は回避できる。
『目標との距離は800mです。問題なく撃てます』
隼人は背部ウェポンアームから大型滑降砲を受け取る。この時折り畳まれた砲身が展開して脇の下から抱え込むようにして、上部に突き出たグリップを握り発射体勢に入った。
ターゲティングシステムを起動し照準を合わせる。
『照準誤差修正中..........完了しました、どうぞ』
ダァン!!
発射された弾頭は、高速で空間を突き抜け防壁に着弾した。
『命中確認。次弾装填』
しかし着弾面にヒビが入っただけでまだ貫通はしていない。自動で装填が完了すると第2射を放った。弾頭は第一層の防壁を貫いた。そのまま連続で、3射4射と砲撃を壁に叩きこむと第二層を貫き本丸が顔を出した。
バッゴオォン!
「なんだ!」
付近の突然地面が爆発した。周辺に連続的な爆発が小規模ながら地震が起きて、その場を離れた。
『砲撃です。おそらく先ほどの部隊が戻ってきたものと推測します』
「どううすればいい」
『このまま作戦を継続してください。IAはこちらで対処します』
「わかった」
隼人はIAをレインに任せて拠点に向かった。
――――――――――――――――――
レインは、拠点に接近するIAを見た。今ならミサイルですべて撃墜することは可能だが、必要な消費は最小限にとどめなければならない。それに近くに隼人がいる以上、下手なことはできない。状況からして数は少ないが侮れない数でもある。
ならば、
『コードX2-1-3起動』
カタパルトハッチが開きデッキ奥から6本の翼が生えたドローンが見えた。
『各部機体チェック.....異常なし』
機体は重力を感じさせないようにフワッと浮き発射体勢に入った。
スラスターの出力の上昇を確認。準備完了。
『射出シークエンスに入ります........5...4...3...2..1...射出』
射出されたドローンは翼を展開し羽ばたくようにして空を駆けた。
―――――――――――
隼人は市街地を飛行しながら拠点に向かっていた。途中レーザーが行く手を阻もうとするが幸い遮蔽物だらけのこの場所で当たることはない。ただ自軍の拠点が近いにもかかわらず、容赦なく打ってくるのはさすがにどうかと思うが。
穴の開いた防壁を、飛び越えて内部に侵入した。
侵入すると眼前に球体を見た。とても大きく見上げれば首が痛くなるほどだ。スキャンで調べるとどうやらこれが例の転送装置らしい。
ライフルを構え念のためレイン問いかける。
「撃ってもいいんだよな?」
『主機の停止は確認しています。問題ありません』
やるならば、再起動不能になるぐらいに破壊してしまおう。
ある程度距離を取ってライフルの出力を上昇させる。発射されたビームは転送装置に命中した。
『ネクシス1、離れてください』
被弾箇所から熱が膨張し、主機もろとも転送装置が小爆。施設そのものは完全に沈黙した。
『作戦成功です。エネルギー供給を受けていた各レーザー砲台も沈黙しました。今そちらに...』
ドォォンンン!
突如背中から強烈な衝撃が襲った。
「がぁ!」
隼人は勢いで吹き飛ばされ、転送装置に身を打った。
...今度は何なんだ....
体を起こして、索敵スキャンで確認をする。
反応があった。場所は先ほど開けた抜け穴だ。
視線を向けると大型レールガンを片手に1体のIAが立っていた。どうやらこの拠点の防衛に来たのだろう。
『識別確認。
隼人は感じたことのない独特な違和感を覚えた。今までのIAとは何か雰囲気が違う。本来鋭角的な外見をしているのだが、そんな風貌は見られなかった。武骨で歴戦の猛者を彷彿させるようなそんな雰囲気を奴から感じる。
『・・・』
「どうしたの?」
『RG-1、大型高出力レールガン。我々サイネリアが開発した武器です』
...レールガンか...
「長くてデカいな」
素直にそう感じた。初めて見るが身長とほぼ同じ大きさのをサポートなしに片手で持っている時点でこれはやばい奴だと直感で分かる。
『レールガンに注意して下さい。初速はさることながらフルバースモードは毎分約5000発の弾丸が発射されます』
人間がまともに食らえば、一瞬で体が残らないであろう威力だ。
隼人は直ぐに動けるよう姿勢を低くした。
...さぁ、どう来る...
2人は静かに動かずに互いを見つめ合いながらタイミングを定める。このピリつくような場が胸を刺すように思えた。
ジャリ
動いた。が、それは隼人ではなかった。こっちが前足を踏み込む予備動作をした瞬間、目にも止まらない速さで急接近してきたのだ。
...はや!...
余りの速さに動く間もなく懐に入られた。
回避動作よりも先に振りかぶった拳が隼人の鳩尾にねじ込まれた。
「ごふぉ!」
中のものが、口から噴き出ると同時に後方へ身が吹き飛んだ。そのまま残骸を突き抜け壁を割って外へ放り出された。
数回バンドした後、身を翻してブレーキをかけ全身を使って止まった。
バイザーを開けて吐き出したもの外に出す。強烈な異臭と鉄の臭いが交じり合い内部に充満していて、鼻がおかしくなりそうだ。
「ゴホッゴホッ」
腹を抑えながら口元を拭い、隼人は前を見た。煙の中から奴が歩きながらゆっくりと現れた。
...見えなかった...
前回戦闘した
隼人はふらつきながらも立ち上がり、直ぐにヴァリアブルライフルをレーザーに切り替えて発砲した。
しかし、引き金を引いた時には、そこに姿はなかった。レーダーが示した座標は上だった。
奴は空中でレールガンを構えて発射体勢に入っていたのだ。
隼人は鉛の雨を後ろへ下がりつつホバー走行で回避しながら応戦する。
レールガンなのに高速連射であるため余計に対応しずらい。しかも戦場が市街地で直線状に開けた場所なので射線が通りやすい。
突然真横に光が降り注いだ。レーザーだ。照射源を確認すると、視界から左斜め前方にレーザーがこちらに、砲塔を向けていたのだ。
「クソ、なんで動いてんだ!」
『内1機が予備電源により起動しました。消費電力を計算すると起動時間はそこまで長くありません』
かといってそんな油断は許されない。あの威力は身をもって体験したが、被弾すればどうなるかわからない。
「後ろか!」
余所見している間に先回りされたのだろう。今度は両手に実体剣が握られている。
しかもその実体剣、通常のよりも長く何故か刀身が青白く発光してるのだ。スキャンをしたところビームが刀身を覆っているようで、ある意味
隼人は振り向きながら、
一度離れると、再度振りかぶりお互いに連撃を繰り出した。
途中、隼人は剣撃をする直前に急速に後ろにステップを踏み、間合いを開けた。
隼人も咄嗟に動くが、数発命中し被弾してしまう。
『ミサイルポッド被弾』
接続を解除し爆発から逃れることが出来た。
次は目の前から実体剣を手に爆煙から奴が姿を現した。隼人は反射的に折り畳み式シールドを展開し防御態勢を取った。
バシュン
シールドは赤い断面を見せ正面から真っ二つに割れた。目の前にはギラついた赤いモノアイが見えた。
「なに!」
硬直した隼人に
「ぐッ!!」
地面に着地しながら両足で勢いを堪える。
「なんてパワーだ。今までのIAとはレベルが違うぞ」
『おそらく、ワン・オフ・ソルジャーです』
「何それ?」
『経験値と成長速度が他のIAよりも高く、それ故に独自に戦闘スタイルを確立したIAの事です。いわば特質者です』
....なるほど、つまりそれ相応の経験値を積んだ猛者ってところか....
ここでそんな奴に合うなんて、なんてタイミングの悪い事だろう。
勝てるかな、そんな後ろ向きな感情が出てきた。まるで壁を相手にしている様に思えたのだ。
「怯えてどうすんだ、やるしかないだろう」
中の自分に喝を入れて気持ちを奮い立たせる。
隼人は地面を蹴り上げ反撃を開始した。奴を相手にして分かったことがある。それはフェイントが通用しない。小手先のカウンターは戦闘能力の差によって覆されてしまう。
「だったら、正面突破するしかないじゃないか!」
ヴァリアブルライフルをラックに接続し、両腕の
「はぁあああ!!」
ぶつかり合い、切り抜けるようにしてお互い離脱すると隼人は反転し壁に着地し、溜を作り壁を蹴った。
互いに攻撃を繰り出し、時には受け流して反撃、それをいなして急所を狙ったりと、2人は激しい近接戦を繰り広げた。だが、そんな戦闘も長くは続かなかった。
「ハァ...ハァ...ハァ...」
隼人は徐々に消耗していく体力を感じるのに対し、あっちはロボットだ。そんなものは感じない。元々の戦闘力は高いが、そこから上乗せするように学習し練度が高まっているのが分かる。
隼人は大型滑降砲を取り出し照準を
「いっけぇ!」
放たれた高速徹甲弾は、空気の帆を纏い空間を突き抜ける。あっちはそれに合わせて、レールガンを発射した。
発射された弾頭は同じ射線を通りぶつかり合った。
突如爆発が起こった。それは自分の大型滑降砲だった。
隼人は何が起こったかわからなかった。口径はのこっちの大きさはこっちの方が大きいはずなのに、向こうの弾丸は高速徹甲弾を貫通して砲塔に直撃に命中したのだ。
爆発で体が大きくよろけた隙に奴は実体剣を構えて接近した
「しまった!」
隼人は眼前に振り下ろされる光を見た。
その時だ、
隼人は攻撃がが来た方向に視線を移した。
そこには飛行機に似たドローンがこっちに急接近しているのが見えた。
『間に合いましたか』
「レイン!」
ドローンはミサイルを放ち
「それは?」
『話は後です。まずはドッキングをします』
「分かった」
隼人は表示されたガイドに従って加速を掛ける。
『相対速度問題なし、軸合わせ良好、フライト形態へ形態変更します』
2機は飛行したままリンクしその後のドッキングはすべてオートで行われた。
ドローンは変形しウェポンアームが上に曲がり、左右のコネクタが露出する。互いのコネクタが接続される。肩と脇腹に固定ロックが掛かり、ウェポンアームはドローンから新たな武装を受け取りドローンの上部へと保持された。
「これはいったい?」
『FU-1、高機動フライトシステム。フライトユニットです』
武装は主翼に搭載されたビーム砲に誘導型多連装ミサイル。最大の特徴は圧縮時の粒子量と加速性が強化され機動力が大幅に向上したことだ。
「すごい、これなら」
今までよりも圧倒的な性能に感心した。隼人はヴァリアブルライフルをリロードし、
『ぶっつけ本場ですね』
「合わせて見せるさ」
勝負はここからだと、そんなことを言われている気がした。
だったらこっちもと隼人は、スラスター全開で奴に突撃する。
ビーム砲を打ちながら接近し
「はぁ――!」
2つの光が交じり合った。
2体は距離を取り追撃をかける様に隼人はミサイルポッドを全弾発射した。
『出力上昇を検知、注意を』
レールガンからグリップが出るとそれを握り照準を合わせる。
『フルバスーモード、レディ...............ファイア』
瞬間、見たことない
「!?」
直ぐに回避行動に入った。放たれたミサイルは全て撃墜されその波は、自分にまで押し寄せている。照準速度も正確だ。
...どうする...
レーダーに反応があった。
「レーザー砲台がまだ稼働しているのか」
....そうか!....
「レイン、あれハッキング出来る?」
レインは言われた通りレーザー砲台をスキャンする。
『システム防壁の抵抗力は確認できず.......可能です』
「頼む」
『3秒持たせて下さい』
『わかった』
その間に隼人は全力で回避行動に専念する。レールガンの後は、原形をとどめないほどボロボロになっていく。
『ハッキング、完了しました。いつでも撃てます』
「撃って!」
砲台から、
フルバースト中の弱点の1つは、その反動故に行動が制限されるのだ。
なので隙を作りやすいというデメリットがある。
だから反動制御しつつ照準をレーザーに無理やり向けた。2つは同軍のものとはいえ相打ちになった。片方は主機に被弾、もう片方は、電源に被弾し爆散した。
瞬間、爆煙から2つのビームが走った。そして、中から猛スピードで隼人が突っ込んできた。
「見えた!」
隼人は
一閃。
結果はどうなったかわからない。互いに状況を確認した。
背後から爆発音が聞こえた。
振り返ると奴の片腕がないことに気づいた。
隼人はヴァリアブルライフルを構えて引き金に指をかけた。
突然、
『警告、複数のミサイルが接近中』
直後、多数のミサイルが隼人に襲ってきた。
ビーム砲で迎撃ながらその場を離れた。
「まずい、奴は!」
とどめを刺す絶好のタイミングで、横やりが入ったのだ。隼人は視線を動かすも姿はどこにもなかった。索敵スキャンをかけてレーダに注目すると、空の向こうに
「クソ、逃がすか!」
『無理です。我々の戦闘区域から離脱してます』
隼人は追いかけよとするもレインの静止に阻まれる。
「でも、まだ」
『目的はこの周辺の制圧と掃討です。それに我々の戦いはまだ終わっていません』
レーダーに反応があった。
「増援か!」
『総数約500です』
「クッ...わかった。奴の決着はまた今度にしよう」
隼人は深呼吸して頭を切り替える。
「今の自分でどこまでできるか、やってみるか」
前方のIA軍に向かって多連装ミサイルポッド発射した。直ぐに設定をトップアタックに切り替えて連続発射。
ミサイルは、二手に分かれてIA軍に迫る。
数十体の
「・・・」
予測通りおとり第一波はすべて墜とされた。二波は頂点に達するとブースター全開にして一気に急降下を始め目標に向かって加速する。
タイミングを見て隼人自身も前に出た。
第二波に気づくと直ぐに迎撃行動に移った。だがミサイルの速さ故に数発は命中し残りは撃墜された。
この隙に隼人は
ミサイルをずらして発射しタイミングをずらしながら二手に分けることで、接近しやすくしたのだ。全てを倒すことはできなくても奇襲には成功した。これでいいのだが、今ので周辺のIAが隼人を捕捉した。
『反撃きます』
光の雨が前から降ってきた。ステップブーストでジグザグに避けながら前に進んでいく。所々に弾丸並みの光線が所々に被弾し多少の圧力を感じるが、気にせず突き進む。
「む?」
次は奥の方からミサイルの雨が降ってきた。これも回避しつつ徐々に射程内にまで収めるとミサイルを全弾発射。
『全弾命中確認』
左腕に追加の折り畳み式シールドを展開し、ヴァリアブルライフルで反撃する。
シールドはビーム対策が施されていて当たってもしても構造上ビームを弾き熱を通しにくくなっている。対空網を潜り抜け目視で確認すると、出来る限りの多くのIAをターゲットに収めた。
「補正頼んだ!」
『了解』
レインのマルチロックオンによって、IAに照準が向いた。隼人はヴァリアブルライフルとミサイルランチャーを両手に持って照準を合わせる。
「一斉発射だ!」
瞬間、全身の武装が起動し全ての火力が解き放たれた。
火器管制システムをレインに任せ、隼人は両手に意識を集中した。
IAはそれぞれ回避行動、迎撃を行うも間に合ず次々と撃墜されていく。
火力による暴力とは、まさにこのことだろう。
煙の中から続々とIA残骸が海に落ちて沈んでいくのが見えた。
やがてすべて打ち尽くすとそれぞれパージして身を軽くする。
「やったか?」
あの攻撃の嵐で生き残ってるやつがいるのかと隼人は思った。
『警告、IAを検知しました』
すると
「嘘だろ」
打ち漏らしがあったにせよ、あれで生きているのは反則だろう。
....もう終わりにさせてくれ...
そう思い左腕の
「これで最後!」
隼人は、最後の
『周辺の敵影なし。作戦終了です、お疲れ様でした』
「ああ、お疲れ様」
『さぁ、帰投しましょう』
しかし隼人は、動かない。
『ネクシス1、どうしました?』
「いや、最後あいつ」
戦闘後の余韻を感じる中、隼人はあることが気になっていた。
....なんで、最後反撃しなかったんだろう....
短い時間にせよ、反撃の猶予はあったはずなのに。
「見逃してくれたのか?」
『分かりません。私としてもAIの思考は読み取れるもではありません。ですがもしそうなら、再戦を望んだのではないでしょうか』
「再戦か」
...お互い次は万全の状態で戦おうってか...
「律儀だな」
『そうですね。さてネクシス1、帰りましょう。今あなたは負傷しています、スーツで何とか意識を保っていられますが、さすがに限界です』
...確かに。さっきから目眩がして少し眠たい気がする...
「了解、帰投します」
―――――――――――――――――――――
<機体解説>
型式番号SD-1A チェイサー
タイプ ドローンタイプ
身長 全長2.4m
装甲材質 高濃縮劣化ウラン
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます