第3話
気づいたら、よく分からない状態だった。
ログハウス的な部屋のベッドに、俺は寝かされていた。
誰が脱がせてくれたのか、俺はアンダーシャツとパンツだけになっていて、布団や毛布がこれでもかってぐらいかけられていて、足元にはほんのりとあったかいもの………湯たんぽか?でも暖房は多分ついてなくて、鼻が冷たいと思った。
ここはどこで俺は誰?って、いや、俺は
ここマジどこ。誰か。誰かいねぇの?
キョロキョロしてみたけれど誰もいなかった。
でもとりあえず助かったことには感謝だった。
雪が作り出す真っ白な世界を、俺は初めて怖いと思った。もう絶対終わったと。
助けてくれたのは誰なのか。
よくあんな真っ白な状態で俺を見つけられたな。ある意味奇跡だ。
お礼を。
お礼を言いたい。
ひゅうううううううう………
カタカタ、カタカタ………
静かな部屋に、風と、鳴る窓の音。
………なんかこえぇかも。
心細くて、だから起き上がれなくて、どうしたらいいんだろうって本気で悩み始めた時だった。
カチャリ。
ドアが開く音が、して。
入って来たのは。
透き通るような白い肌の、絶世の美女、だった。
スラリとしたスレンダーな身体。
ショートカットの、濡れたような艶やかな黒髪。こっちを振り向いたくっきり二重の黒目がちな双眸。通った鼻筋。柔らかそうな唇。目元と頰のホクロが、なんか印象的。
見惚れた。
って、俺、この美女にスキーウェア脱がされたのか?
それちょっと………恥ずかしいかも。
「よかった、目が覚めた」
にっこりと笑う美女は異様に薄着だった。
暖房がついていないだろうこの部屋で、袖を捲った白いシャツにGパン。
「ざっと身体を見たけど、ケガはないみたい」
「………あ、ありがとう、ございます」
「どういたしまして」
「あ、あの」
ここはどこで、あんたは誰で、どうやったら俺は帰れる?
聞きたいことは、山だった。
「雪がやまないんだ。多分この様子だとあと3日はやまない。ごめんね、この吹雪じゃ、危なくて君を帰せない」
「3日………」
マジかよ、おい。
仕事どうすんだよ。今日は土曜日だから明日はいいけど、明後日から。
せめて誰かに連絡を。
「あの、電話、ありますか?」
「………ここには、ない」
「マジか」
今何時だ?時計もここにはなかった。
昼は多分とっくに過ぎている。無事だってことだけでも連絡入れないと、もしかしたら大騒ぎになってるかも、だし。
「何か、連絡する方法は」
美女が窓の外を見た。
その姿が。
真っ白な外を眺めるその姿があまりにもキレイで、ふと昔話に出てくる雪女を思い出させた。
「………雪」
「………え?」
「雪がやむまでは、無理だよ」
美女は小さな声でそう言った。
ひゅうううううううう………
ひゅううううううううううう………
外は白の嵐だった。
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