第8話

「ごめんね、びっくりさせてばかりで」

 

 

 

 

 

 ぽかーんってセツの両手を見て、ドアの向こうに消えたふたりを見て、ぽかーんってしてたらセツがそう言って、中途半端に起き上がっていた俺にほら横になってって笑った。

 

 

 

 

 

「ユキオは僕の弟。織波と喧嘩して怒ってて、だからずっと雪が降ってたんだよ」

「………イエティが、弟」

「うん、そう。カテゴライズするとユキオはイエティで、僕は………」

 

 

 

 

 

 セツが口籠もった。

 

 

 微笑んでるのに、どこか泣いてるように、見える。

 

 

 

 

 

 雪のように白い肌。

 

 

 闇のような漆黒の髪。目。

 

 

 俺に触れると赤く爛れていく手。

 

 

 

 

 

「雪女?」

「………うん、そうだよ。カテゴライズするとね」

「………カテゴライズって」

「単純に父さん似か母さん似かの違いとも言う」

 

 

 

 

 

 悲しそうな双眸とは裏腹の、明るい声音。

 

 

 そして。

 

 

 

 

 

「あ、ちなみに織波は神さまだよ」

 

 

 

 

 

 爆弾。

 

 

 

 

 

「はああああああ⁉︎かかかかっ………神さま⁉︎」

「うん。この辺りの産土神さま。まあ基本は普通の人間だけどね。彼は神田織波かんだおりはっていって、普通の親から生まれて普通に育ってる。中身が神さまってだけで」

「ちょちょちょちょっ………。ちょっと待って、頭がっ………頭が全然ついていかねぇ」

「だよね?だから深く考えなくていいよ?」

 

 

 

 

 

 セツは寝よ?って優しく言って、俺には触れないようにしながら、布団を直してくれた。

 

 

 そして、窓の外を眺めた。

 

 

 

 

 

 あんなに降っていた雪は、やんでいた。

 

 

 雲の隙間から青空も覗いていた。

 

 

 

 

 

 イエティが機嫌を直したから?そうなのか?

 

 

 

 

 

 白く白く、白い、世界に。

 

 

 セツが重なる。

 

 

 

 

 

「………熱が下がったらお別れだね、倫」

 

 

 

 

 

 ドキン。

 

 

 

 

 

 俺の心臓が、大きく跳ねた。

 

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