りんりんと愉快な仲間たち 3

「おりさん」

「ああ?」





 セツが豪快に鼻水を拭いてても、びろーん状態のままのおりさんに俺は近づいて、側に行って、見下ろした。






 アロハな神さま。






 うさんくさい。ウソだろって今でも時々思う。



 けど。






「セツの花粉症、どうにかならないか?」

「………倫」






 寝てはいないけど、目を閉じてたおりさんがその閉じてた瞼を持ち上げた。



 持ち上げて。






 見上げる。俺を。






 うさんくさいって思うけど、やっぱりおりさんは神さまで、俺は文字通り、俺には何もできないから、神頼みをするしか、ないんだよ。






 だってさ。あまりにもじゃん?



 セツが、あまりにも。俺のせいすぎて。






 神頼みしかできないけど、神頼みで何とかなるなら。おりさんが、できるなら。






「セツを元に戻せば治る」

「元にって」

「りんりんが触ると火傷をするセツだな」






 俺が、触ると。






 そりゃそうだよな。



 俺たちが触れ合えるようにしてもらった結果がコレなんだから、元に戻せば元に戻る。簡単な話だ。その通りだ。






「そこは今のままで、花粉症だけ治すことは?」






 できるならそうしてるんだろうと思いつつも、ダメ元で聞く。






 セツの倫って小さな声がまた聞こえた。






「プラスをひとつ増やせばマイナスもひとつ増える。それがこの世の仕組みだからどうにもならない。仮に花粉症を消したとしても別の何かが生まれる。やってみても構わないけど、正直、いたちごっこだな」

「………」

「何事もプラスだけでは存在できないようになってんだよ」






 じゃあ。俺は。






 それじゃあ、俺は。






 何も、できないのか。



 いつもセツにしてもらうばっかりで。



 いつもセツは。己を削るように俺にセツをくれるのに。くれてるのに。






 返せることが俺には神頼みしかできない。



 けど神頼みもでもどうにもできない。






 って。






「………え、ちょっと、おりさん」

「あ?」

「プラスだけでは存在することができない、なら。消えたセツが戻った反対は何だ?」






 サラッと聞き流すとこだったけど、引っかかって。急に、そこが。






 体質改善の結果が花粉症。



 なら?






 おりさんが、じっと俺を見る。



 見てる。






 見て。






「それは、あれだ」

「………あれって?」






 どきんどきん、した。



 良い方のじゃない。もちろん。



 イヤな方への、どきんどきん。






「それは」

「………僕の命の時間、だよね?」






 するりと俺とおりさんの間に入ってきたのは。



 柔らかで穏やかな、セツの声だった。

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