ぜひこの海に飛び込んでみてほしい!

海難法師とワガママ人魚を読み終わったところまでのレビューになります。

海事代理士、いわば海の法律家として働くまりかには別の顔がある。
現世と幽世を行き来し、海異を鎮める役目を負っていた。
霊力が強い人間には怪異が見える世界で、まりかは簪を杖に変えて異形と戦う。

そんな彼女の仕事仲間もとっても多彩だ。

1話に出てくる小金魚の精霊三匹に、きっと読者は癒されるはず。マシュマロいくらでもあげたくなっちゃうけど、まりかさんに怒られそうなので私は自重します(笑)

そして2話から出てきた居候人魚カナも、幼い顔立ちで自由奔放な物言いかと思いきや急に老獪な威厳を放つ。麗しいだけでなく獰猛な人魚の描写に、きっと心躍るに違いない。

そして読者の皆さんは、1話をクリックした時にきっと驚くはず。なんと、1万字あります!WEB小説は文字数少なめにしてPV数を稼いで……みたいな論調がある中、ものすごい厚みを放つ本作。でも、あらすじを読んで納得。作者様は「本」として読むことを想定されています。とてつもない気概を感じて、私も拝読する時はスッと背筋が伸びました。

文章は流麗で細かく、一つの動作に必ず理由があります。客人にコーヒーを淹れるにしても、お参りをするにしても。なるほど、これは「本」だと感じました。活字中毒さんには堪らないのではないでしょうか。

それからあまり馴染みのない海のお仕事についても丁寧にわかりやすく描写してくれていたので、すっと世界観に入り込むことができました。知識量と下調べがすごい。妖や精霊などファンタジー要素がありますが、そのどれもに説得力を感じます。

ライトな文章を好む方々にも、怖がらずにこの作品という海に飛び込んでみてほしい。きっとあなたを優しく受け入れてくれるはずです。

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