一読してすぐに思ったのは、「清潔な」語り口だなということ。
登場人物たちがわちゃわちゃ楽しそうにしている時はもちろん、激しい戦いの場面などもありながら、それでもあくまで健康的で根幹がヒューマニスティック。
退廃的にならない、凛とした風情がいいなと思いました。実に「みずみずしい」。
そしてもう一つは「丁寧な取材」。本作中に多数散りばめられた海にまつわる様々な角度からの現実のうんちくが、ファンタジー物としての自由奔放な想像の妨げにならず、「錨」になっているというべきか……読者が作中で心遊ばせる足場になっていてくれる。
例えば港町の悲しい歴史を背景にした「ハクモクレンの約束」。そして密漁という切り口で海の犯罪・犯罪者を描いた「牛鬼と濡女」……と、こう書いてしまうと堅苦しいのですが、そこに怪異たちのおりなす奇妙不可思議な事件が見事にマッチしてくるところが本作の魅力。
安心して現世と幽世を行ったり来たり出来る、良質な「現代ファンタジー」だと思います。是非ご一読してお確かめあれ。
大好きな小説です!
生き生きとしたストーリーやキャラたちには、読者を惹き付ける魅力がいっぱい。海、怪異、妖、式神、退魔、温かいエピソード、伏線……含まれている要素の一部を並べただけでもワクワクしてきます。たくさん登場するキャラクターにも、それぞれを特徴づける性格、容姿、属性、能力、アイテム、秘めた過去や影等があり、すごく個性豊かで、ひとりひとりを好きにならずにはいられません。
それでいて、作者様の伝えたいものや好きもしっかりと描かれているのですから最強です。「多くの読者が好む要素」に依存しておらず、めちゃくちゃ面白いです。
また、確かな筆力としっかりしたイメージ、膨大な知識に裏付けられた文章も素晴らしいです。うみコト! は1話の文字数にボリュームがありますが、負担を感じずに読めてしまいます。それは作品が面白いだけでなく、過不足のない情景・心理描写、使用する語句や表現の分かりやすさ、作中で語る専門的知識の取捨選択・読者が理解できる説明の仕方に心を砕いているからでもあると思います。たくさんのメッセージが込められ、幅広い知識欲を満たしてくれるのに、複雑にも説明臭くもならず、エンタメ性に富んでいてすごく読みやすいのです。
魅力は小説内だけにとどまりません。
近況ノートではキャラデザや資料を見ることが出来ますし、作中に登場する実在のものや場所を現実で楽しむことも出来るのではないでしょうか。
数多の魅力を持ち、そのどれもが埋もれず煌めいている小説です!
様々な面から物語を読む楽しさを思い出させてくれる作品です。
作者様の、このキャラクター達を描きたい、そして海のことを広く知ってもらいたい、との深い想いが克明に伝わってくる物語です。
海事に関して詳しくない人でも分かりやすいよう配慮されていて、普段海に縁遠い生活を送っている身には、これまで知らなかったことを知る楽しさが味わえました。
一方で付喪神や妖たち、異形のものたちが大勢息づく世界でもあり、主人公たちが怪異に対峙する場面はファンタジーならではの躍動感に満ちていて、とてもワクワクします。
また、キャラクター達がそれぞれに見せる気遣いや優しさ、そして愛情に毎話心が温かくなり、そんなところもこの物語の魅力と感じています。
なお、私は主人公のまりかともう一人の主役である明の、ある種稀有な距離感で展開される爽やかな交流が傍で見ていて大変楽しいです。
現在第二章が始まったところですが謎も多く、この物語の背景がこれからどこまで広がっていくのか、キャラクター達の関係性がどのように育っていくのか、じっくりと追っていきたいと思います。
ちなみに読み始めて最初に惹かれたのは、読みやすく生き生きとした文章の随所で光る、描写の言葉選びの美しさでした。
丁寧に紡がれた読み応えのある物語をお探しの方に、強くお勧めいたします。
海事代理士に海上保安官。
そもそもが海を職場とする人々である。一人は仕事の傍らに、一人は仕事として、海の怪異……海異に対処する。
水というもの、海というものには数多の怪異がつきものであるし、神話もまた海と切り離すことはできない。
そんな海を舞台に現世と幽世を行き来して、そして解決していく。
風景の描写、今どこにいて何をしているのか、そういったことが非常に丁寧に描かれている作品でした。登場人物の掛け合いもまた面白く、ぐいぐい物語に引き込まれます。
この密度、文章の厚み、まさしく本なのでしょう。本として腰を据えて読むとより楽しく読めることと思います。
ぜひご一読ください。
朝霧まりかは海事代理士であり、強い霊能力を持つ。
その霊能力を活かして、海事代理士の仕事の合間に様々な『海異』の依頼を受けていた。
とある海異の依頼を受けて、人魚のカナと出会い物語が始まる。
私の好きな物語です。
主人公のまりかや相棒? のカナ、他にも魅力的な登場人物がいます。
どの登場人物にも親しみを持つことができて、物語を楽しむことができます。
主人公まりかやカナ、他の登場人物にも伏線が隠されているようで次が気になって仕方ありません。
この作品の魅力は風景描写と登場人物の会話だと私は思いました。
細かな風景描写を大切にされている印象を受け、主人公がどこにいるのか、どんな体験をしているのかが良く分かります。
また、登場人物が魅力的なので会話場面を読んでいてとても楽しいです。
生きているように感じました。
とても魅力的で読む手が止まりません。
是非読んでみてください!
海難法師とワガママ人魚を読み終わったところまでのレビューになります。
海事代理士、いわば海の法律家として働くまりかには別の顔がある。
現世と幽世を行き来し、海異を鎮める役目を負っていた。
霊力が強い人間には怪異が見える世界で、まりかは簪を杖に変えて異形と戦う。
そんな彼女の仕事仲間もとっても多彩だ。
1話に出てくる小金魚の精霊三匹に、きっと読者は癒されるはず。マシュマロいくらでもあげたくなっちゃうけど、まりかさんに怒られそうなので私は自重します(笑)
そして2話から出てきた居候人魚カナも、幼い顔立ちで自由奔放な物言いかと思いきや急に老獪な威厳を放つ。麗しいだけでなく獰猛な人魚の描写に、きっと心躍るに違いない。
そして読者の皆さんは、1話をクリックした時にきっと驚くはず。なんと、1万字あります!WEB小説は文字数少なめにしてPV数を稼いで……みたいな論調がある中、ものすごい厚みを放つ本作。でも、あらすじを読んで納得。作者様は「本」として読むことを想定されています。とてつもない気概を感じて、私も拝読する時はスッと背筋が伸びました。
文章は流麗で細かく、一つの動作に必ず理由があります。客人にコーヒーを淹れるにしても、お参りをするにしても。なるほど、これは「本」だと感じました。活字中毒さんには堪らないのではないでしょうか。
それからあまり馴染みのない海のお仕事についても丁寧にわかりやすく描写してくれていたので、すっと世界観に入り込むことができました。知識量と下調べがすごい。妖や精霊などファンタジー要素がありますが、そのどれもに説得力を感じます。
ライトな文章を好む方々にも、怖がらずにこの作品という海に飛び込んでみてほしい。きっとあなたを優しく受け入れてくれるはずです。
読ませていただきました‼︎
特に妖の物語好きなので楽しませていただきました‼︎
タイトル通りの二人が出会ってから物語が回る感じで、途中途中主人公の生い立ちとか家族とか急にぶっ込んでくるのでえっ!?となりました。
そこからめくるページが止まらず…
ただ主人公もまだまだ謎が深そうでこれから楽しみです。
また、明という人物が出てきてまた面白くなって行くので目が離せませんでした。
付喪神たちや海の妖…海に因む妖怪が出ておりその辺も面白いですね。特に灯台組の関係好きですね、つまり片方のためにグレてるんですよね、好き。
人魚のカナも謎多めですが、服の回は萌えましたね。猫耳フード被ったり…
今後が楽しみです‼︎
特別な力を持つヒロイン。
超特別な力を持っていそうな人魚。
風情ある横浜の港を舞台に、二人の運命が交差していくお話。
まずは何も考えず、近況ノートに上がっているキャラクターデザイン画像を見ましょう。説明など受けなくとも、この作品の世界観が伝わって来ます。
この作者様は、とにかく文章が丁寧、上品で綺麗、雅な日本語とはこういうことなのだろうと感心しっぱなしです。そんな純和風な文章だからこそ、ぽつりと現れるカタカナ横文字が映えて見えるような相乗効果が生まれています。
古風な難しい単語は検索しながら読み進めましたが、そんなことを必要とせずスラスラ読めてしまうような、活字が好きな目の肥えた読者さんであれば、より味わい深く楽しめるオススメ作品ではないかと思います。
このレビューは7話の時点で書きました。
物語はまだまだ序盤だと思います。
二人にどんな未来が待っているのか気になりますね。