読む楽しさを存分に味わえる、心温まる海と妖(あやかし)の物語

様々な面から物語を読む楽しさを思い出させてくれる作品です。

作者様の、このキャラクター達を描きたい、そして海のことを広く知ってもらいたい、との深い想いが克明に伝わってくる物語です。

海事に関して詳しくない人でも分かりやすいよう配慮されていて、普段海に縁遠い生活を送っている身には、これまで知らなかったことを知る楽しさが味わえました。

一方で付喪神や妖たち、異形のものたちが大勢息づく世界でもあり、主人公たちが怪異に対峙する場面はファンタジーならではの躍動感に満ちていて、とてもワクワクします。

また、キャラクター達がそれぞれに見せる気遣いや優しさ、そして愛情に毎話心が温かくなり、そんなところもこの物語の魅力と感じています。
なお、私は主人公のまりかともう一人の主役である明の、ある種稀有な距離感で展開される爽やかな交流が傍で見ていて大変楽しいです。

現在第二章が始まったところですが謎も多く、この物語の背景がこれからどこまで広がっていくのか、キャラクター達の関係性がどのように育っていくのか、じっくりと追っていきたいと思います。

ちなみに読み始めて最初に惹かれたのは、読みやすく生き生きとした文章の随所で光る、描写の言葉選びの美しさでした。
丁寧に紡がれた読み応えのある物語をお探しの方に、強くお勧めいたします。

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