近世の世界情勢を彷彿とさせつつ、同時に魔法が息づく世界観。その中でイギリスをモチーフにした魔法大国を舞台に、主人公のウィル(62歳、独身)をはじめとする個性豊かな魔法使いたち、剣と銃火器で戦う勇敢な騎士たちが、いずれも縦横無尽に活躍します。
キャッチコピーにある通りのドタバタハイテンションファンタジーであることに疑いの余地はありませんが、キャラクターも世界観もきっちり練られて構築されており、確かな厚みを感じさせます。
軽妙でテンポの良い語り口、次々と展開されるドタバタ――しかしながらその描写はシーンの情景、キャラクターの性格や心情、更には服装や身に着ける小物といった細部にまで至り、ただ勢いに任せたハイテンションで走り抜けるのではなく、隅々まで血が通っていると思わせる物語です。
そしてなんと言ってもそれらの丁寧な描写が、決して物語の勢いを殺ぐことなく、むしろより場面やキャラクターをくっきりと浮かび上がらせ、臨場感を確かなものにしているという点で、作者様の筆力の高さが窺えます。
全体の長さに対して話数が少なく、Web小説としては特異な構成と言えるのかもしれませんが、一話を読み終える頃にはすっかりその世界に魅了され、次のページを開きたくなっていることでしょう。
具体的な内容に触れることなく、ひたすら素晴らしさを語ってしまいましたが、まずお話の雰囲気を知りたい方は、作者様の近況ノートに掲載されているイラストをご覧になることをお勧めします。物語のエッセンスが凝縮されていますので、そこで興味を惹かれましたなら、ぜひプロローグのページを開いてみてください。
楽しさと読み応えの両方をお求めの方に大変お勧めです。