その6 肖像画を描こう(後編)

「これイチゴじゃん」

 予想通りカッコーが絡んできた。誰かに似て、何かにつけて絡んでくるのだ。

「ちゃんと顔描けよ」

 放課後の教室。掲示された絵を笑う少年を睨み返す。どこがイチゴだ。耳もちゃんとあるし。

「ちょっと、何か文句あるの!」

 ミカちゃんだ。こんな時、真っ先に味方してくれるのだ。

「イチゴだって生きてるんだよ!」

 違う、そうじゃない。

「不格好なイチゴほど美味しいし」

 追い打ちやめれ。

 私はずいと前に出た。カッコーが怯む。

「な、何だよ」

「このイチゴ、イケメンでしょ?」

「は?」

 そう、あんたなんかよりずっと。

「……訳分かんね」

 退散する少年を尻目に、私は絵の父を見上げた。目が合った気がして、ちょっとだけ逸らした。

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