300字のさっちゃん

君野 新汰

その1 憧れの姉

 同級生のミカちゃんには、中学生の姉がいる。たった三つ上なだけなのに大人っぽくて、綺麗で。一人っ子の私には、その存在はとても眩しく映った。

「お姉ちゃんがほしい」

 私は両親に愚痴った。困ったように顔を見合わせると、父が聞いてきた。

「妹か弟じゃだめか?」

 その言葉に、ぶんぶんと首を振る。ほしいのはお姉ちゃんなのだ。なのに、どうして妹やら弟の話が出てくるのだろう? 怒る私を母が宥めてくれたけれど、気持ちは治まらなかった。

 次の日、居間の入り口で私は立ち尽くしていた。親のセーラー服姿がそこにあった。

「今日一日だけ、あたしがお姉ちゃんだよ」

泣きそうになった。私のせいで、こんなことに。

「ごめんお父さん、もうやめて」

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