その2 父を超えてゆけ 

 そのデパートでは、ホールに立つクリスマスツリーへ店側の用意した飾り――玉やら星やら――を飾りつけることができた。

 父が銀の玉を思いっきり放る。と、それは十メートルはあるツリーの天辺近くに引っかかった。

「ふっふっふ、娘よ。この父を超えることができたら何でも買ってやるぞ」

 小学四年生相手に、実に大人気ない。父の顔へ玉を投げつけたが、身を屈めて回避されてしまった。

「甘いな娘よ」

「ううん、私の勝ち」

 首を傾げる父へ、笑いかける。

「お父さんの頭の上を『越えた』でしょ?」

 一拍の後、父が必死の形相でまくし立ててきた。

「そんなのいんちきだし。ノーカンだし」

 子どもか。私は大きく振りかぶった。ホールに乾いた音が響いた。

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