その3 きゅうりかクレープか、それが問題だ

 家族三人でお昼を作ろう、となったまではよかったのだけれど。

「準備が簡単だし、クレープよね」

 と母が言えば、

「馬鹿な。寝言は俺の手巻き寿司を食べてから言え」

 と父。しまいには「きゅうりのクレープ巻きはどうだろう」と不穏な意見が。何だきゅうりのクレープ巻きって。

「さっちゃんはどっちがいい?」

 二人が同時に私を見つめる。うぐ、小学生にストレスをかけるな。仕方なく私は答えた。

「クレープ」

 がっくり崩れ落ちる父。

「でも」

 父に笑いかける。

「美味しいのが食べたいから、お父さんが作ってよ」

 途端にぱっと顔を輝かせると、父は胸をどんと叩いた。

「おお、任せておけ」

 うん、単純。

 こうして、きゅうりクレープ危機は無事回避された。

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