その13 いちごのある風景(承前)

 ぴかぴかになった玄関に私は立ち尽くしていた。

 正面に堂々と飾られていたのはいちご、もとい父の肖像画だった。

「……何で?」

「ん? 仕事行く時に元気もらおうと思って」

 満面の笑みで答える父。よくもそんな恥ずかしいセリフを……何も言えなくなるだろうが。目線で母に助けを求めるも、にっこり笑って返された。こんな時、母は中立なのだ。うぐぐ。

「恥ずかしいし外してよ」

「何で? 元気になるだろ?」

 ならんし友だちも家に呼べやしないし。ここは引き下がれない。

「じゃあ、勝負しよ」

「ん?」

「雪合戦で私が勝ったら、あれやめて」

「ほほう」

 父が不敵に笑う。

「乗った」

 もう一度、絵を見上げる。

 気持ちよく新年を迎えるためだ。やるしかない。

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