その7 タイミング
「わあ」
学校から帰るなり、台所に満ちた甘い匂いに歓声を上げる。母がいなり寿司を作っているのだ。
「食べたくなったし、作っちゃった」
父と違い、母はべたべた構ってきたりはしない。かといって放置というわけでもなく、どころか心を読んでいるのかってくらい、いつも絶妙のタイミングで世話を焼いてくれる。
今もそう。授業中から、なぜか無性にいなり寿司な気分だったのだ。
そう言うと、母は微笑んだ。なんだか二人繋がっているような感覚。ちょっと気恥ずかしい。
「手伝うよ」
隣に立ち、私は手早くたれの染みたお揚げを持ち上げた。
夜、父がお土産を買ってきた。いなり寿司の折詰。母と顔を見合わせ、笑った。
やっぱり、タイミングって大切。
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