アルカディアのかわいさにかつもくするにゃあ

今ではない時代、たぶん未来のお話。
塔の内部にある書庫で配架作業をしていた「ぼく」の元に来客が訪れます。
ディスプレイに映し出されたのは、なんと数十人の僧侶でした。
彼らの無体な要望を受けて困惑する「ぼく」の足元にすり寄る茶トラのメス猫。彼女こそが喋る蔵書検索猫「アルカディア」でした。

「こんな猫でも立派な相棒でしてね」

「こんなねことはなんたるいいぐさにゃあ」

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端正な文章で綴られた短編です。
特筆すべきは何といっても、もうー、アルカディアさん!! かわいい、かわいい!!
彼女の存在感がすごいのです。
きな臭い僧侶の恐ろしさを、聡明で尊大なアルカディア様の「こんやはかつおぶしをしょもうするにゃあ」といった台詞が和らげています。僧侶の圧力によりアルカディアと「ぼく」は危機的状況に置かれているのですが、彼らのやり取りは、この喋る猫様のお陰でむしろユーモラスに見えます。楽しい。「でにゃおしてまいれ」と尊大に言い放つアルカディアさん最高です。

「この世界に本の存在する意義」を考えながら、愛らしく喋る猫に萌え萌えしてしまいました。
彼女は「愛らしく」喋ろうなんて思っていないし、むしろプライドの高い御方なのですが、そこがまたひらがなの台詞と相まってギャップ萌えを生み出しています。

猫党の方、本を愛する方、ぜひ魅力的なアルカディアさんに一目会いに来てください。

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