第19話 強敵出現


 その後も、さらにダンジョンを進む。

 僕はこれ以上、シロさんの足手まといになりたくない……!

 むしろ、僕がシロさんを護れるようにならないと……!


 僕は改めて、気を引き締める。

 ちらっと横を見ると、シロさんも真剣な雰囲気をまとっていた。


「シロさん……?」

「ああ、ごめんゼンくん……。ここからは、未知のエリアだからね。さらに集中していかないと!」

「そ、そうなんですね……! 頑張ります!」


 僕の身がいっそうこわばる。

 もし僕が失敗したら、シロさんが命を落とすことになるかもしれないんだ。

 もう二度と、失敗はゆるされない。


「ここは……ボス部屋でしょうか……?」

「そうかもね……雰囲気がさっきまでと違う……」


 僕たちは、大きな空洞に出た。

 壁の色が違ったりして、明らかになにかありそうなよかんだ。


 僕たちはさっそく、通路を抜けて、その空洞に足を踏み入れる。


 すると――。


 ポチ。


「え…………?」


 僕たちの足元から、そんな音がする。

 もしかして……僕たちはなにか罠を踏んでしまったのだろうか……!?

 いやな予感がする……。

 あれだけ失敗はしないと誓ったはずなのに……!

 でも、僕は咄嗟にサイドステップで横に避けた。

 そのおかげで、僕はなんともならずに済む。


 しかし……。

 そうだ、シロさんは……!?


 僕ははっと、横を見た。

 すると、シロさんの元へ檻が落ちてきていた。

 シロさんは、閉じ込められてしまった。


「シロさん……!?」

「大丈夫だ、ゼンくん。落ち着いて……! 少し、逃げ遅れてしまったよ……」


 そんな、シロさんが檻に捕まるなんて……。

 あのシロさんが、そんなミスを……!?

 いったいシロさんは何を考えていたんだろうか……。

 そういえば、さっきもぼーっとしていたよな……。


「と、とりあえず……助けます!」

「む、無理だ……! この檻は魔力反射の加工がしてあって、鍵がないとあけられない……!」

「そ、そんなぁ……!」


 僕は絶望感に打ちひしがれた。

 こんな危険なダンジョンで、僕一人。

 シロさんは檻に捕まってしまった。

 ここからいったい、どうすればいいんだ……!?


「っくっくっく……! まんまと罠に引っかかった! きゃはは!」


 そんな声とともに、奥の暗闇からミノタウロスが現れた。

 そうか……この罠は、コイツが仕掛けたものなのか……!?

 そうだとしたら、かなり知能の高い魔物だ。

 きっとかなり危険だぞ……。

 僕一人で、どうやって戦えばいいんだ……!?


「おや……? 一人逃げ出したみたいだな……。まあいい。俺様が直々に、相手してやるか……!」


 ミノタウロスは、そう言って僕を見て、斧を取り出した。

 あんな大きな斧を、片手で……めちゃくちゃ強そうだ……!


「大丈夫! ゼンくん、落ち着いて……! 今のゼンくんなら、アイツにも勝てるはずだよ!」


「わ、わかりました……! 頑張ります!」


 僕がここで負けたら、シロさんがどうなるかわからない。

 なんとしても、僕一人の力でこいつに勝って、僕はシロさんを護るんだ!


「うおおおおおおおおおお!!!!」


 僕はミノタウロスに斬りかかった――。





【シロ視点】


 うう……さっきはうかつだった。

 どうにも、さっきからゼンくんのことを、過剰に意識してしまう。

 ここはダンジョンなのだから、よそ見はいけないんだけどな……。

 でも、せっかく二人きりなのだし、ゼンくんももっとアプローチとかしてきてくれればいいのに……。

 そう思って、さっきはわざとトレントに捕まってみたりもしたけれど……。

 はぁ……。


 今度はまさか、本当に罠にかかってつかまってしまうなんて……。

 ゼンくんを危険に晒すことになってしまって、申し訳ない。

 それに、情けないなぁ……。

 隣の男の子に見とれて、罠にはまってしまうなんて。

 ゼンくんには絶対に言えないなぁ……。


 でも、そんな情けない私の言葉を信じて、戦ってくれるゼンくんは本当にかっこいい。

 この子になら、本気で私の横に立てる日がくるんじゃないか、そんな気がする。

 なにより、本当は私が捕まって不安なはずなのに、それを一切感じさせない彼の姿に、私は感動していた。

 やっぱり、ゼンくんとの出会いは、運命だったのかな……。

 私は檻の中で、ゼンくんの勝利を祈った。

 といっても、きっと彼はあのミノタウロスに勝つんだろうけど……。



――――――――――――――――

あとがき


新連載開始!

よろしくお願いします!


『追放もの』の勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。《ざまぁフラグ》は勘違いした【主人公補正】で無自覚回避します。


https://kakuyomu.jp/works/16816700429527557087/episodes/16816700429527754758

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