第17話 慢心
僕はまた、シロさんとダンジョンに潜る約束を取り付けた。
それだけじゃない、今日のぼくは一味違う。
そう、冒険者ランクCになったんだ。
一般に、Dまでのランクは下級冒険者と呼ばれている。
でも、Cからは上級。
つまりは、ギルドから一人前の冒険者として認められたということだ。
「あらためて、おめでとうだねゼンくん」
「ありがとうございます! これもシロさんのおかげです!」
僕もC級になったからには、これまでみたいなサポートだけじゃなく。
実際にシロさんの横に並んで、積極的に戦っていきたい。
そういう思いで、僕は意気込んでいた。
「じゃあ、さっそくダンジョンにいこうか」
「はい! シロさん!」
◇
――ズシャァ……!
「すごいねゼンくん! 見違えるほどだよ!」
「本当ですか……!」
道中、僕は積極的にモンスターを倒していく。
得意のサイドステップで、華麗にモンスターへ距離を詰め。
シロさんから教わった剣術で、ばっさばっさと斬っていく。
「まさかゼンくんが短期間でここまで成長するなんてね」
「いやあ……あはは」
それは僕も驚きだ。
全部シロさんのおかげといってもいい。
人っていうのは、環境や適性で、こうも変わるんだなぁと。
「安心して背中を預けられるよ」
「シロさん……」
あのシロさんにそこまで言ってもらえるようになるなんて。
僕は今までにない幸福感と満足感を覚えた。
あこがれの人に、認めてもらえた。
まだまだシロさんには遠いけど、ようやくすこし……。
隣に立てたとは言えないけど、少し後ろからついていくくらいにはなれたのかな。
感慨深い。
「もう実力だけなら、Bランクほどといってもいいんじゃないかな?」
「えぇ!? ほんとですか……?」
僕はおだてられて、いい気になってしまう。
あとから思えば、この時の僕は完全に調子に乗っていたんだと思う。
「次の昇格試験がたのしみだね」
「そうですねぇ……」
そうだ、ここらで少し、シロさんにもっといいところを見せよう!
今の僕になら、中ボスくらいなら倒せるかもしれない!
◇
おあつらえ向きに、ちょうどいいモンスターが現れた。
トレントだ。
木の魔物。
見た目は完全にただの木なんだけど、枝を触手のようにうねうね使ってくる。
「ゼンくん……気を付けて……! こいつは強敵だよ! しかも、ただのトレントじゃない。マジックトレントだ……!」
たしか、魔法を得意とするモンスターだったはずだ。
近づけば触手にからめとられるし、遠ざかれば魔法攻撃で痛い目をみる。
そういう、やっかいな魔物。
「大丈夫ですシロさん! 僕にまかせてください!」
僕は調子にのって前へでた。
だって、僕はもうC級冒険者。
一人前の、冒険者なんだ。
いつまでもシロさんの後ろで守られているわけにはいかない。
僕だって、シロさんの役に立てるって、証明したいんだ!
「うおおおおおおおお!」
シロさんが戦いやすいように、僕が先に前へ出て、トレントの枝を斬る……!
そういう作戦のつもりだった。
しかし……。
「ゼンくん……!? ちょっとまって……! 危ない……!」
「大丈夫ですよ! 僕なら……!」
そう、このとき僕は――完全に油断していたのだ。
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