『追放もの』の悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。《ざまぁフラグ》は勘違いした【主人公補正】で無自覚回避します。

月ノみんと@成長革命2巻発売

第一部

第1話 思い込みって、怖いよね!


「はぁ……今日も仕事疲れたなぁ……」


 恐怖の16連勤――もう、やめたくなりますよ?

 でも、生きるためには働かなくてはいけない。

 だけど、精神的に限界も近かった。

 電車のつり革にもたれながら、俺は楽しかったころを思い返す。


「そういえば最近、本もろくに読めてないなぁ」


 学生時代、あれだけ好きだった本屋にもしばらく立ち寄れていない。

 あの頃は、ちょうど異世界転生ってのが流行りだしたころだったっけ。

 俺も、もうこうなったら、異世界にでも転生したいよなぁ。

 そんなことを考える。


 ――プシュウ。


 電車が駅に着き、扉が開く。

 ちょうど向かい側のホームに、電車がやってくるところだった。

 このままそこまで歩いて行けば俺も楽に――。

 いやいや、そんなのはダメだ。

 早まるな、俺。


 現実世界では、死んでも異世界に転生できるなんて限らないんだから……。

 自分で頬を平手打ちして、正気を取り戻す。


「そうだ、久しぶりに本屋にでも寄ってみよう」


 俺は、駅構内にある書店へ歩を向けた。





「へえ……最近はこういうのが流行りなのか」


 本屋には平積みになった人気タイトルの本がずらり。

 そんな中で、俺が手に取ったのは一冊だけ残っていた小説。


「『追放勇者』ねぇ……」


 俺が読んでいたころと比べると、ずいぶんとシンプルなタイトルだな。

 少し前は、長文タイトルで、異世界に転生する小説が人気だった。

 俺も、毎日必死で読んでいたものだ。

 しかしそれが、最近は忙しい日々が続いたせいで、ぜんぜん追えていなかった。

 流行っていうのは、けっこう変わるものだ。


「どんな話なんだろう……?」


 本を手に取って裏返してみるも、肝心のあらすじが書いていないタイプのレーベルだった。

 それに、中を開こうにもシュリンクがしてあって、見ることが出来ない。


「うーん、気になる」


 シンプルなタイトルが、余計に俺の興味を引いた。

 最近のタイトルすべてがシンプルというわけでもないようで、この作品だけが特別短いようだった。

 それなのにも関わらず、一番売れているようだったから、中身はそうとう面白いのだろう。

 俺はタイトルから、それがどんな中身なのか想像してみる。


「追放勇者ってことは、あれか……」


 勇者といえば、物語の主人公と相場が決まっている。

 少なくとも、俺が過去に呼んできた作品はそうだった。


「だから、そのか……?」


 俺はそう、結論付ける。

 それ以外には思いつかない。


「はは、俺もなぁ……イヤな上司や部下を追放してぇわ」


 そう思うと、なんだかこの作品を読んでみたくなった。

 あのクソ上司の顔を、そのロクデナシと重ねて読んだら、きっとスカッとするだろう。


「よし、決めた! この本を買って帰ろう」


 今日は珍しく早く帰れたもんだから、今から帰って読む時間がとれる。

 俺はそれを一冊とって、レジへと向かう。


「次の方――どうぞ」


 レジのお姉さんは、めちゃくちゃ綺麗な人だった。

 若い、大学生のバイトかな……?

 俺は思わず、見とれてしまう。

 職場では出会いなんかない、殺伐としている。

 はぁ、俺の人生にも、こんなヒロインがいればいいのに……。


「あの、次の方、どうぞ……?」


 あれ、俺だよな……?

 しかし、足が動かない。

 次第に、視界がぼんやりとしてくる。

 あ、これ……ヤバいヤツだ。


 前に、テレビとかで見たことがある。

 これ、危険な病気のサインだわ。


 だんだん手足が震えてきた。

 そして、汗がじわっと吹きだす。

 くそ……。

 この本をさっさと買って、帰りたいのに。

 どうして俺は今、レジの前でピクピク震えているんだ……?


 あ、そういえば全然寝てないな……。

 エナジードリンクも、もう水のように飲んでいた。

 だって、会社の蛇口をひねったらエナジードリンクが出てくるんだもん。

 どんなブラック企業だよ……寝かせるきねえじゃん……。


「あの……お客様……?」


 レジ前に突っ立ったままの俺を、不審に思ったのか、店員さんに声をかけられる。


「あ…………」


 しかし、喉がぱさぱさに渇いていて、返事が出来ない。

 どんどん身体から力が抜けていく――。


 俺は、もうここで死んでしまうのだろうか……?


 なんとかレジへ一歩、踏み出す。

 しかし。


 あれ……?

 なんで天井が俺の前に……?


 俺は方向感覚を失って、その場に倒れた。

 打ち所が悪かったのか、頭につーんと電気が走ったような感覚がする。

 あったかい。

 どうやら血がでているらしかった。

 そういえばレジ前に、本が平積みになったコーナーがあったな。

 そこの角に後頭部をぶつけてしまったらしい。


「きゃああああああああああああ! お客様!? 大変! 誰か、救急車を呼んで!」


 ああ、せめて最後に、あの本だけ読みたかったな……。

 そんなことを考えながら、俺は意識を失っていった。

 最後に、俺の顔に、さっきの本が落ちてくる。


『追放勇者』


 ――ドサ。


 異世界転生、してみたいなぁ……。



◆◆◆◆



 『追放勇者』という小説は、いわゆる『追放もの』の小説だ。

 そのジャンルでは、勇者は決して主人公ではない。

 むしろ、勇者は悪役で、荷物持ちなどの縁の下の力持ちが主人公である場合が多い。

 この『追放勇者』という小説も、勇者が荷物持ちを追放するところから物語が始まる。

 そして、追放された荷物持ちは、のちに真の力に覚醒し、勇者をぎゃふんと言わせる、という物語なのだ。

 そう、タイトルの『追放勇者』というのは、その荷物持ちのことである。

 真の勇者とは、荷物持ちのことなのであった。



==================================

【★あとがき★】!!カクヨムコン参加中です!!


まずは読んでくださりありがとうございます!

読者の皆様に、大切なお願いがあります。


もしすこしでも、

「面白そう!」

「続きがきになる!」

「期待できそう!」


そう思っていただけましたら、

フォローと★星を入れていただけますと嬉しいです!


★ひとつでも、★★★みっつでも、

正直に、思った評価で結構です!


広告下から入れられます!

モチベーションが上がって最高の応援となります!

何卒宜しくお願い致します。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る