『追放もの』の悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。《ざまぁフラグ》は勘違いした【主人公補正】で無自覚回避します。
月ノみんと
第一部
第1話 思い込みって、怖いよね!
「はぁ……今日も仕事疲れたなぁ……」
恐怖の16連勤――もう、やめたくなりますよ?
でも、生きるためには働かなくてはいけない。
だけど、精神的に限界も近かった。
電車のつり革にもたれながら、俺は楽しかったころを思い返す。
「そういえば最近、本もろくに読めてないなぁ」
学生時代、あれだけ好きだった本屋にもしばらく立ち寄れていない。
あの頃は、ちょうど異世界転生ってのが流行りだしたころだったっけ。
俺も、もうこうなったら、異世界にでも転生したいよなぁ。
そんなことを考える。
――プシュウ。
電車が駅に着き、扉が開く。
ちょうど向かい側のホームに、電車がやってくるところだった。
このままそこまで歩いて行けば俺も楽に――。
いやいや、そんなのはダメだ。
早まるな、俺。
現実世界では、死んでも異世界に転生できるなんて限らないんだから……。
自分で頬を平手打ちして、正気を取り戻す。
「そうだ、久しぶりに本屋にでも寄ってみよう」
俺は、駅構内にある書店へ歩を向けた。
◇
「へえ……最近はこういうのが流行りなのか」
本屋には平積みになった人気タイトルの本がずらり。
そんな中で、俺が手に取ったのは一冊だけ残っていた小説。
「『追放勇者』ねぇ……」
俺が読んでいたころと比べると、ずいぶんとシンプルなタイトルだな。
少し前は、長文タイトルで、異世界に転生する小説が人気だった。
俺も、毎日必死で読んでいたものだ。
しかしそれが、最近は忙しい日々が続いたせいで、ぜんぜん追えていなかった。
流行っていうのは、けっこう変わるものだ。
「どんな話なんだろう……?」
本を手に取って裏返してみるも、肝心のあらすじが書いていないタイプのレーベルだった。
それに、中を開こうにもシュリンクがしてあって、見ることが出来ない。
「うーん、気になる」
シンプルなタイトルが、余計に俺の興味を引いた。
最近のタイトルすべてがシンプルというわけでもないようで、この作品だけが特別短いようだった。
それなのにも関わらず、一番売れているようだったから、中身はそうとう面白いのだろう。
俺はタイトルから、それがどんな中身なのか想像してみる。
「追放勇者ってことは、あれか……」
勇者といえば、物語の主人公と相場が決まっている。
少なくとも、俺が過去に呼んできた作品はそうだった。
「だから、その
俺はそう、結論付ける。
それ以外には思いつかない。
「はは、俺もなぁ……イヤな上司や部下を追放してぇわ」
そう思うと、なんだかこの作品を読んでみたくなった。
あのクソ上司の顔を、そのロクデナシと重ねて読んだら、きっとスカッとするだろう。
「よし、決めた! この本を買って帰ろう」
今日は珍しく早く帰れたもんだから、今から帰って読む時間がとれる。
俺はそれを一冊とって、レジへと向かう。
「次の方――どうぞ」
レジのお姉さんは、めちゃくちゃ綺麗な人だった。
若い、大学生のバイトかな……?
俺は思わず、見とれてしまう。
職場では出会いなんかない、殺伐としている。
はぁ、俺の人生にも、こんなヒロインがいればいいのに……。
「あの、次の方、どうぞ……?」
あれ、俺だよな……?
しかし、足が動かない。
次第に、視界がぼんやりとしてくる。
あ、これ……ヤバいヤツだ。
前に、テレビとかで見たことがある。
これ、危険な病気のサインだわ。
だんだん手足が震えてきた。
そして、汗がじわっと吹きだす。
くそ……。
この本をさっさと買って、帰りたいのに。
どうして俺は今、レジの前でピクピク震えているんだ……?
あ、そういえば全然寝てないな……。
エナジードリンクも、もう水のように飲んでいた。
だって、会社の蛇口をひねったらエナジードリンクが出てくるんだもん。
どんなブラック企業だよ……寝かせるきねえじゃん……。
「あの……お客様……?」
レジ前に突っ立ったままの俺を、不審に思ったのか、店員さんに声をかけられる。
「あ…………」
しかし、喉がぱさぱさに渇いていて、返事が出来ない。
どんどん身体から力が抜けていく――。
俺は、もうここで死んでしまうのだろうか……?
なんとかレジへ一歩、踏み出す。
しかし。
あれ……?
なんで天井が俺の前に……?
俺は方向感覚を失って、その場に倒れた。
打ち所が悪かったのか、頭につーんと電気が走ったような感覚がする。
あったかい。
どうやら血がでているらしかった。
そういえばレジ前に、本が平積みになったコーナーがあったな。
そこの角に後頭部をぶつけてしまったらしい。
「きゃああああああああああああ! お客様!? 大変! 誰か、救急車を呼んで!」
ああ、せめて最後に、あの本だけ読みたかったな……。
そんなことを考えながら、俺は意識を失っていった。
最後に、俺の顔に、さっきの本が落ちてくる。
『追放勇者』
――ドサ。
異世界転生、してみたいなぁ……。
◆◆◆◆
『追放勇者』という小説は、いわゆる『追放もの』の小説だ。
そのジャンルでは、勇者は決して主人公ではない。
むしろ、勇者は悪役で、荷物持ちなどの縁の下の力持ちが主人公である場合が多い。
この『追放勇者』という小説も、勇者が荷物持ちを追放するところから物語が始まる。
そして、追放された荷物持ちは、のちに真の力に覚醒し、勇者をぎゃふんと言わせる、という物語なのだ。
そう、タイトルの『追放勇者』というのは、その荷物持ちのことである。
真の勇者とは、荷物持ちのことなのであった。
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