第7話 ~受付嬢さん視点~


 よかった……昨日は、ゼンくんが報われて本当によかった。

 そう、昨日私は、白銀の死神――シロとして、ゼンくんのやられたことを証言した。

 ギルドの同僚のリィンがそれを、紙にまとめてくれた。

 あとはこれを、ギルド長に確認してもらい、裁判所へ持っていけば、彼らの罪は確定する。


 私は今日もギルドのカウンターで、受付嬢の仕事にはげむ。

 冒険者業はあくまで裏の顔。

 私の本来やりたい仕事は、冒険者のサポートなのだ。


「ゼンくん……今日もうれしそうですね?」


 まあ、昨日のことだろうとは思うけど……。

 彼はまだ、この私――受付嬢のラフラと、白銀の死神が同一人物だということを知らない。


「そうなんですよ! 聞いてくださいよラフラさん! なんで昨日お休みだったんですか!」

「えーっと……その、昨日は実家の用事で……」


 ここは適当に嘘をついて誤魔化そう。


「シロさん……あの白銀の死神がですね! 僕のために来てくれたんです!」

「そうですか……よかったですねぇ」


 言われなくても、全部知っている。

 全部私がやったことだ……。


「しかも、ガイアをやっつけちゃうんですから! 本当にシロさんは強いなぁ!」

「まあ……S級冒険者ですからね……」


 私は口ではそう言うが、実際、ゼンくんに褒められてうれしい気持ちが抑えられない。

 ゼンくんのためにやったことだから、彼がよろこんでいる姿を見るのはすごくうれしい。


「しかも、僕とまた会ってくれるんです! うれしいなぁ! 今度はどんなシロさんが見れるだろうか……!」


 うぅ……ゼンくん……。

 もうやめて……。

 私は心の中で、悲鳴を上げる。


「あ、そうだ! ゼンくん、これからはクエスト、どうするんですか?」


 彼は元のパーティーメンバーを失って、今は一人だ。

 白銀の死神は限られた時間しか活動しない。

 そんな彼が、一人でこれからどうするのか、気になる。


「そうですね……。シロさんに追いつくために、修行をしたいところですが……」


 うんうん、その調子!

 と私は心の中でゼンくんにガッツポーズをする。

 私としても、ゼンくんが強くなるのに期待をしている。

 彼は剣術の才能があるし、いい剣士になるはずだ。

 一流の剣士である私が言うのだから、まずまちがいない。


「でも……僕、ヒーラーなんですよねぇ……」

「へ……?」

「ん……?」

「い、いま……なんて言いました?」

「え、だから……僕、ヒーラーなのでソロは難しいなぁと」

「ちょ、ちょっとまってください!? ゼンくんって、ヒーラーなんですか!?」

「え、はい……そうですけど……」


 私は驚きを隠せなかった。

 だって、あれだけの身のこなしと状況判断力を持つ彼が、ヒーラーだなんて。

 彼にはきっと、ものすごい戦闘の才能が眠っている。

 なのに、ヒーラーなんてもったいなすぎる!


「ゼンくんは、どうしてヒーラーになったんですか……!?」

「えーっと、それは……たしかガイアが『俺が剣士をやるからお前は回復でもしとけ』って……」


 なんということだ……。

 きっとガイアはゼンくんに目立たれたくなかったのだろう。

 でも、それを真に受けてしまうゼンくんって……。


「ゼンくんは……それでよかったんですか?」

「いやぁだって、僕はとくにこだわりなかったですし」


 はぁ……。

 彼のお人よしぶりには驚く。

 だけど、才能は活かすべき場所で活かさなければ!

 もちまえの器用さで、ヒーラーとしてもそこそこやってこれたのだろうけど……。

 彼の才能はそこじゃない。

 私がギルド受付嬢として、いや……白銀の死神として、彼を正しく導いてあげなくては……!

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