第13話 提案
「いやぁ、ほんとにジャイアントオークを倒せるなんて……! ラフラさんの言った通りでしたよ!」
僕は嬉しくて、その日のうちにギルドへ行った。
そして受付嬢カウンターにいるラフラさんに、いつものように話す。
「やっぱり、ゼンくんには才能があるんですね」
「えへへ……やっぱそうなんですかね。シロさんと、ラフラさんのおかげです!」
「あははー……まあ、それどっちも私なんですけどね……」
ラフラさんは、最後に小声でぼそっとつぶやいた。
僕にはいまいちよく聞き取れなかった。
「え……?」
「あ、いや、なんでもないんですよ! アハハ……」
それにしても、まさか僕に本当に剣の才能があったなんて。
これは、ガイアたちもびっくりだろうな……。
今まで、僕は間違った育成方針で、冒険者を続けていた訳だ……。
「あ、そうだゼンくん」
「はい……?」
「そろそろ、冒険者ランク昇格試験、受けてみませんか……?」
「…………えぇ……!? ぼ、僕がですか……!?」
もともと僕がいたガイアのパーティー、彼らはAランクだった。
そしてシロさんはSランク。
で、僕はというと……。
今だに、ソロとしてはDランクなのだ。
ヒーラーのソロでランクを上げるのなんて、ほとんど不可能だ。
僕がFランクだったほうが、報酬も少なくて済むから、ガイアは僕に昇格をさせてくれなかった。
だから、そんな僕が今更昇格だなんて……。
「今のゼンくんなら、イケるはずです! 真の才能――剣術に目覚めたゼンくんなら!」
「そ、そうですかね……まあ、ラフラさんがそう言うなら……」
正直気乗りはしないけど、やってみるしかないか……。
「やります! 僕、シロさんに追いつくために、頑張ります!」
「その意気ですよ! 私も応援しています!」
ああ、シロさんもいい人だけど、ラフラさんも優しくて素敵な人だな……。
おっと、浮気はいけない……。
僕はまっすぐ、シロさんだけを見て頑張るって、決めたんだ……!
でも、ラフラさん、どことなくシロさんと似ているなぁ……。
「では、対戦相手が決まったら知らせますね」
「はい、お願いします」
昇格試験は、通常、同じランクの相手と試合をして、勝った方が次のランクに進む。
だから、その相手をくじ引きで決めたりしなければいけないのだ。
どんな敵が相手だろうと、勝つけどね……!
◇
【サイド:ラフラ】
うう……ゼンくん、着々と成長しているよぅ……。
ああ、はやく彼と共に、思いっきり冒険をしてみたい。
「はぁ……でも、そろそろ気づかれそうかなぁ……」
私としても、この秘密を打ち明けられたら、どれほど楽かと思う。
だけど、そうはいかないのだ……。
「だって、今更ばらすなんて、恥ずかしすぎるもんー!!!!」
私はまた、ギルドのカウンターで一人、顔をうつ伏せて悶絶する。
あれだけシロさんシロさんと言ってくれるゼンくんに「実は私がシロさんでしたー!」とは言えない……。
どんな顔をして彼の前に姿をさらせばいいのか、まったくわからない。
「ねえ、ラフラ……最近おかしいわよ? 大丈夫……?」
「あ、うん……! 大丈夫大丈夫ー! ちょっとね」
同僚のリィンにも心配をされてしまう。
はぁ……なんだか毎日、ギルドにいる間中、彼のことを考えてしまう。
「まさか、ラフラ……病気……?」
「え、あ……いや……そう……かも……?」
「もー、気をつけてよー」
そう、これはある種の病気だ。
私はそんなことを考えながら、昇格試験のくじ引きを引いた。
「あ…………」
そこには、とても意外な対戦カードが書かれていた……。
「ラフラ、次の昇格試験の対戦、決まった……?」
「あ、うん……それが……」
横から、リィンに覗かれてしまう。
私ひとりだったら、まだごまかしようがあったのだけれど……。
「あーこれは……ちょっと、荒れそうね……」
「大丈夫かなぁ……」
「ま、彼なら大丈夫でしょ。最近、調子いいみたいだし」
「だといいけど……」
私は、今からゼンくんのことが心配でたまらないのだった。
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