第14話 昇格試験


 ついにこの日が来てしまった。

 Dランクからの昇格試験……。

 そして僕の相手にえらばれたのが……。


「ガイア……」

「よう、ゼン。久しぶりだな」


 そう、なんと僕を追放したあのガイアだったのだ。

 ガイアは僕を殺そうとした罰で、ランクを下げられていた。


「ゼンくん、頑張ってくださいね! 今のゼンくんならきっと勝てます!」

「ありがとうございますラフラさん!」


 僕はラフラさんとリィンさんに見守られながら、戦闘フィールドへ。

 ギルドの裏には、闘技場のような場所があった。


 僕とガイア、勝った方がCランク。

 そして負けた方は、また3か月間はDランクだ。


「おいおいゼン? 俺に勝てると思ってんのかよ……? ずっと俺のうしろでちょこまかとヒールをしてただけのお前が……?」


 ガイアは性懲りもなく、僕を挑発してくる。

 この前あれだけ反省した素振りをみせていたのはパフォーマンスだったのか……?

 まあ、自分が落ちぶれたのも僕のせいだとでも思っているんだろうな。

 実際は、僕を騙して捨てた大悪党のくせに……!


「ガイア、残念だけど僕が勝つよ。僕は今までの僕とは違うんだ……!」


 僕はゆっくりと剣を抜く。


「はぁ……? お前がどれだけ修行しても、俺にはおいつけねえよ。俺には今まで剣を握って来た十何年という圧倒的アドバンテージがあるんだよ! お前の付け焼刃の剣で勝てるはずがねえ!」


 まあ、ガイアは本来であればAランクの実力者だ。

 だけど、僕だってこの期間で遊んでいた訳じゃない。

 シロさんが見出してくれて、修行もしたんだ。


「シロさんが……! 僕には剣の才能があるって言ってくれたんだ!」


「はっはっは! おめでたいやつだなあ。いくら才能があったって、これだけ実力差があるんじゃあ、そう簡単に埋まるわけないだろ!」


 ガイアはそう言って笑う。

 だけど……。

 もう全然、ガイアのことは怖くない。


「ねえガイア? 怖いのか……?」


「はぁ……? 俺が? お前を……? そんなわけないだろ」


「本当は僕の才能に気づいていたんじゃないのか……? だから、僕に剣を握らせなかった」


「くっくっく、どこまで馬鹿なんだお前は! 死ねえええええ!」


 ガイアはそう言うと、僕に剣を向けてきた。

 まだ開始の合図もなっていないというのに。

 気の早いやつだ。


「来るなら来い……!」


 僕は、剣をまっすぐに構えた……!


「うおりゃああああああああああ!」


 ガイアは大降りで、剣を振りかざす。

 だけど、僕にはそれがすっかり止まって見えた。

 簡単に避けられる。


 ――スカッ!


 それに、ガイアの動きは後ろから、ヒールをしながら何度も何度も見た。

 そんな僕に、彼の攻撃が当たるはずはなかった。


「くそ……! なんで当たらねえんだ……!」


 ガイアはその後もぶんぶん振り回すけど、そのたびにフォームが乱れていった。

 こんなんじゃ、一生やっても僕に当てられやしないな。


「いくぞ! ガイア……! えい!」


 今度は僕の反撃だ。

 思い切り、ガイアにめがけて模擬剣を振り下ろす!

 ちょうどガイアの攻撃を避けたときに、大きな隙が産まれた。


 ――ドン!


 僕の木刀は、ガイアの背中にヒットした!


「ぐぎゃあ!」


 当たり所が悪かったらしく、ガイアはその場に倒れた。


「まだだ……まだ戦える……!」


 しかし、ガイアは涙を流しながら起き上がろうとしてくる。


「無理だ! もう君は戦えない! 死んでしまうぞ!」


 なにも僕とて昇格試験で殺し合いをしようというわけではない。


「うるせえ! 俺をなめるんじゃねえええ!」


 ガイアはなんとか死にもの狂いで起き上がって、僕に襲い掛かって来た。


「てい……!」


 だけど、ボロボロのガイアなんて、簡単に振り払える。

 僕はガイアに向けてもう一発、剣を喰らわせた。

 今度はお腹だ。


「ぐおえ……!」


 ガイアはしばらくその場でのたうち回ったあと、気絶した。


「ぜ、ゼンくんの勝利……!」


 リィンさんがそう告げる。


「やったぁ……!」


 僕はしんじられない思いだった。

 まさかこの僕が、あの強くて怖かったガイアに勝ってしまうなんて。


「すごいですゼンくん! さすが! 成長しましたね!」


 ラフラさんも駆け寄ってきてくれて、よろこんでくれた。


「ありがとうございます! これもラフラさんのおかげですよ! ああはやくシロさんにも報告したいなぁ……!」


 そう、僕はようやく、冒険者ランクを上げることができたのだ。



――――――――――――――――――


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