第10話 修行


 僕はあれから、なんどかシロさんとともにダンジョンへと潜った。

 そして、だんだん剣の腕も上がって来た!

 僕はいつものように、受付嬢のラフラさんとおしゃべりをしていた。


「いやーこれも、すべてシロさんのおかげですよ」

「えへへ……そうですか……?」


 なぜかラフラさんは、頬を赤らめて照れている。


「あれ? なんでラフラさんがうれしそうなんですか」

「い、いえ……べ、別に! なんでもありませにょ!」


 あ、噛んだ……。

 ラフラさんも可愛いところがあるなぁ。

 今日は、ラフラさんに相談をしに来たのだった。

 僕も強くなったことだし、シロさんのいないときでも、ダンジョンに出てみようと思ったのだ。


「ということで、ちょっと一人でクエストに出てみようと思うんです」


 僕はラフラさんに相談する。


「え……」




~受付嬢さん視点~



 私はゼンくんに、ソロでの冒険を相談された。

 そんな……私との冒険は嫌なのかな……?

 不安に思い、訊いてみる。


「え……ゼンくん、その……シロさんとの冒険は……?」

「ああ……シロさんはいそがしいみたいなんで、一人でも修行をしたいんです! すこしでも早く、彼女に追いつきたい! 僕は足手まといにはなりたくないんです……!」

「ゼンくん……」


 私はゼンくんのやる気に感銘を受ける。

 私に追いつくために、そこまでやる気を出してくれるなんて……!


「でしたらゼンくん、私もゼンくんの修行に協力しますよ!」

「本当ですかラフラさん! ありがとうございます!」


 夜は白銀の死神シロ、昼間は受付嬢のラフラとして、私はゼンくんの力になることを決めた。

 

 彼が才能を開花させ、少しでも強くなってくれるのは、私にとっても嬉しいことだ。

 そのために出来ることはなんでもしよう。


 シロとして彼と接している間は、直接剣を教えたりできるが、ラフラとしての私はそうはいかない。

 だが、彼のために最適なクエストを選ぶくらいはできる。

 今の彼にちょうどいい難易度のクエストは……。

 これだ……!


「ゼンくん、それでしたら、このクエストをうけてみてください」

「これは……」

「ジャイアントオークの討伐クエストです!」

「えぇ……!?」


 ゼンくんは驚いて私の顔をまじまじと見つめてきた。

 やだ……そんなに見つめられると照れてしまう。

 ゼンくんの可愛い目が、私の目と合う。

 だが私はとっさにそれをそらしてしまう。


 そして誤魔化すように……。


「ぜ、ゼンくん! ゼンくんならこのクエスト、出来ます! 安心してください!」

「で、でも……ジャイアントオークですよ……。僕、通常種のオークですら倒せるかどうか……」


 ゼンくんは明らかに不安を顔ににじませている。

 だが、私の意見は違っていた。


 今のゼンくんは、シロとの数回の冒険で、かなりの経験を積んでいる。

 私の見立てでは、ジャイアントオークくらいはもう敵ではないはずだ。

 ここでこのクエストをクリアすることで、彼の自信になるはずだ。


「ゼンくん、シロさんに、追いつきたいんですよね……!?」

「そ、それはそうですけど……」

「だったら、このくらい、なんてことないようにしないと……!」

「わ、わかりました……! たしかにラフラさんの言う通りです!」


 どうやら私の思惑通りに行きそうです。

 この調子で、ゼンくんに適切な経験を積ませることで、どんどんと強くなってもらいましょう。

 いずれは私と対等になってもらわなくっちゃ困りますからね……!

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