第10話 修行
僕はあれから、なんどかシロさんとともにダンジョンへと潜った。
そして、だんだん剣の腕も上がって来た!
僕はいつものように、受付嬢のラフラさんとおしゃべりをしていた。
「いやーこれも、すべてシロさんのおかげですよ」
「えへへ……そうですか……?」
なぜかラフラさんは、頬を赤らめて照れている。
「あれ? なんでラフラさんがうれしそうなんですか」
「い、いえ……べ、別に! なんでもありませにょ!」
あ、噛んだ……。
ラフラさんも可愛いところがあるなぁ。
今日は、ラフラさんに相談をしに来たのだった。
僕も強くなったことだし、シロさんのいないときでも、ダンジョンに出てみようと思ったのだ。
「ということで、ちょっと一人でクエストに出てみようと思うんです」
僕はラフラさんに相談する。
「え……」
★
~受付嬢さん視点~
私はゼンくんに、ソロでの冒険を相談された。
そんな……私との冒険は嫌なのかな……?
不安に思い、訊いてみる。
「え……ゼンくん、その……シロさんとの冒険は……?」
「ああ……シロさんはいそがしいみたいなんで、一人でも修行をしたいんです! すこしでも早く、彼女に追いつきたい! 僕は足手まといにはなりたくないんです……!」
「ゼンくん……」
私はゼンくんのやる気に感銘を受ける。
私に追いつくために、そこまでやる気を出してくれるなんて……!
「でしたらゼンくん、私もゼンくんの修行に協力しますよ!」
「本当ですかラフラさん! ありがとうございます!」
夜は白銀の死神シロ、昼間は受付嬢のラフラとして、私はゼンくんの力になることを決めた。
彼が才能を開花させ、少しでも強くなってくれるのは、私にとっても嬉しいことだ。
そのために出来ることはなんでもしよう。
シロとして彼と接している間は、直接剣を教えたりできるが、ラフラとしての私はそうはいかない。
だが、彼のために最適なクエストを選ぶくらいはできる。
今の彼にちょうどいい難易度のクエストは……。
これだ……!
「ゼンくん、それでしたら、このクエストをうけてみてください」
「これは……」
「ジャイアントオークの討伐クエストです!」
「えぇ……!?」
ゼンくんは驚いて私の顔をまじまじと見つめてきた。
やだ……そんなに見つめられると照れてしまう。
ゼンくんの可愛い目が、私の目と合う。
だが私はとっさにそれをそらしてしまう。
そして誤魔化すように……。
「ぜ、ゼンくん! ゼンくんならこのクエスト、出来ます! 安心してください!」
「で、でも……ジャイアントオークですよ……。僕、通常種のオークですら倒せるかどうか……」
ゼンくんは明らかに不安を顔ににじませている。
だが、私の意見は違っていた。
今のゼンくんは、
私の見立てでは、ジャイアントオークくらいはもう敵ではないはずだ。
ここでこのクエストをクリアすることで、彼の自信になるはずだ。
「ゼンくん、シロさんに、追いつきたいんですよね……!?」
「そ、それはそうですけど……」
「だったら、このくらい、なんてことないようにしないと……!」
「わ、わかりました……! たしかにラフラさんの言う通りです!」
どうやら私の思惑通りに行きそうです。
この調子で、ゼンくんに適切な経験を積ませることで、どんどんと強くなってもらいましょう。
いずれは私と対等になってもらわなくっちゃ困りますからね……!
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