熱血おっさんなんてお断り!……のはずが!?

世界の平和を守るヒーロー、アニマライザー。先輩からその『ピンクライザー』の使命を引き継いだJKの咲良だが、長年ヒーローたちを率いてきたレッドライザー・焔の時代錯誤の熱血テンションについていけずにいた。しかし彼女は右も左もわからぬ激闘の中、自分でも予想外だった恋の道をも走ることに……!?

薄っぺらな感想になってしまうのは承知の上でまず言わせてください――面白い、とにかく面白いです!

無類の戦隊好きだという作者さんのアツくて深い想いが凝縮された、とても熱量のある物語。けれど花のJK視点で進行する物語は入り込みやすく、私のような“戦隊もの素人”でも始終楽しく拝見することができました。色分けされたヒーローがいて、それぞれの武器や技をもっていて、最後はなんか合体とかしてどかーんとやるやつ、ぐらいの知識量で全然オッケー!変身や固有の技、そして迫力のある合体シーンまでどれもとても丁寧に書かれていて、まるでテレビ放映を目の前で見ているかのように鮮明に思い描くことができます。

主人公の咲良ちゃんは、これまた今時のJKです。大事な役目だと分かっているからやるにはやるけど、自分の青春をぜんぶ使命に捧げることはしたくない、プライベートは大事にしたいという、ある意味戦士らしくない一面も持ち合わせています。でもこれってリアルに考えてみれば当然ですよね。他のメンバーも自分の時間と戦士の使命のバランスをうまく調整しながらやっているところが現実味があって、なんだか周りの人々の中にもこういった秘密の戦士が隠れているんじゃないかって楽しく妄想してしまうくらいでした。

個人的にものすごく焔はかっこいい男性だと思うのですが、やはり三十路の男なんてJKから見ればただのおっさん。熱血で口煩くてデリカシーもない、咲良にとっては目の上の瘤でしかない彼なのに、その純粋な正義感や強い優しさを見ていくうちにいつの間にか咲良の硬いガードも解かれていき……と、きちんと順序立てされたストーリーが読んでいて心地良かったです。ひとつのきっかけで好きになったりしないのはさすが今時JKって感じなのですが、だからこそ彼女がちょっとでもデレたりする場面がくるとスマホ片手に床を転がり回りたくなるほどの尊さがあるんですよね。

敵は人間たちが使っていたモノが凶暴化して生まれたような『ツクモーガ』という存在。無限湧きの雑魚を引き連れて独特な語尾で喋る彼らの姿はなんだか懐かしく、それでいて強敵もいるので油断できないところ。とくにヒーローの力をまだうまく使いこなせない咲良の視点では『雑魚でもやられてしまうのでは』というヒヤヒヤ感がつきまとい、どの戦闘も手に汗握りながら読む羽目になってしまいました笑 

しかしこのヒーローたち、その使命を全うするため『自分の恋を封印せねばならない』という決まりがあったりします。この制約が非常に面白く、また少し切なくもあったりして、咲良の恋をより応援したくなってしまうんです。うーん、じれったい!笑

恋に戦い、そして熱い仲間との絆。幅広い要素が盛り込まれていて、読み終わってしまうのが本当に寂しく思ってしまうくらい楽しい物語でした。特撮好きな方が読めば、もっといろいろな気づきが得られると思います。

彼らがテレビに映るとしたら、日曜の朝は早起きしてしまうかも♡――素人がそう思ってしまうくらい素敵な物語、全力でおすすめです!

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