第11話 判明!案崎's history

 ゲートをくぐると、そこには巨大な壁があった。爽やかな風も吹いている。なるほど、この景色…ここは天国らしい。

 だが、このゾーンに入る前にやるべきことがある。


 「案崎さん…あなたを倒します…えい!」


 俺のヘロヘロのパンチはあっさり割って入ってきた二身に止められる。


 「離せ二身!こいつは極悪人なんだ!」


 「だから、何があったか説明してくださいよ!案崎先輩も!」


 「…」


 「じゃ、改めて説明させてもらう。まず、走太の言うとおり俺はしてはいけないことをした。タッグを組めるという嘘を伝え、なおかつお前らを利用して最後まで行こうと考えていた。」


 「タッグのことはずっと気になっていましたが…そういうことだったんすね。」


 「あぁ…本当に申し訳ない。だが、俺は決して1位になりたいわけじゃないんだ。」


 「どういうことっすか?」


 「少し長くなるが、話させてもらおう。俺は生きてた頃、裏社会で暗躍してたんだ。ある日、俺はあるグループの機密情報を盗んでほしいという依頼を受けた。実際、それ自体を盗むことは容易かったが…相手も頭一つ抜けててな。俺の仕業だってめどつけて、俺の交際相手を殺したんだ。」


 「それのどこに俺らを利用した理由があるっていうんだよ!」


 「まぁ待て、本題はここからだ。」


 「俺はその犯人がグループのトップだと踏んでグループの本拠地に突入した。だがそいつを倒すのは難しくてな。やむなく…本拠地もろとも爆破して…俺は死んだ。そいつとともにな。」


 「そのトップはトップで相当な悪事を働いていたから、絶対やつは地獄へ落ちた。だから、地獄でそいつを見つけて叩きのめそうと思ったんだ。だが、人数、広さ、その他諸々で探し出すのは不可能だった。」


 「もうだめかと思った。その時耳に挟んだんだ。ゴースト・ランという現世に蘇れるレースがあるってな。やつは絶対生き返りたいはずだ。例え1日だけでも。もしそいつが生き返ったら、現世で何をするかわからない。それに、やつを少しでも幸せにさせるなど到底許せない!だから…俺は1にレースに参加した。でも、1人じゃなかなか残ることは困難。だからお前らを騙して、最後まで残ろうと考えてた、って訳だ…」


 「そうだったんすか…」


 「翔子は天国にいるだろう。だから俺が、相当難しいが天国試験を受けて、受かればまた一緒に過ごすこと自体は可能だ。だが、まずはそのトップをどうにかしたい。そう考えている。」


 「…理由はわかりました。だからといって、あなたが俺達を私欲のために利用したことを完全に許すことはできない。当然、これ以上タッグを組むことなんて、ルール的な観点からもできない。」


 「わかってるさ…」


 「でも」


 「俺もそいつに1位を取られたくない。その目的は同じです。だから…ルールの網をくぐり抜けます。」


 「どういうことっすか先輩。」


 「確かに、タッグは禁止だ。でも、ゾーンをクリアするために他の参加者のスキルをうまく利用することは可能です。鉄球街道のときみたいにね。」


 「…まさか」


 「幸い、俺が〈ターボ〉を使ったとき案崎さんはおぶられるのではなくしがみついてくれていたので、協力したという判定にはなっていません。二身が加わったときは、偶然見られていなかったのでなんとかセーフって感じでしたが。つまり、この方法なら、3人でゴールまで駆け抜けることができる。俺の順位は10位にまで上がっています。2人は11位と12位。後ろは多分、道が崩壊したのでそう簡単には進めないはず。だから前だけ見ましょう。」


 「走太…」


 「次のフィフスゾーンは迷路です。案崎さんのスキルが必要になる。どうです?いけますか?」


 「…あぁ、いけるさ、走太!」


 「ちょ、俺も忘れないでくださいよ!?」


 「わかってるさ。じゃ、行こうか…ヘブンズメイズへ!」

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