ゴースト・ラン
マスターキー
第01話 開幕!ゴースト・ラン
「ここがあの世ってやつか…」
俺は林走太、22歳独身。ジョギング中に車にはねられた、ごく普通のサラリーマンだった。今俺は、あの世にいる。
「振り分け所はこちらでーす。1列になってお待ち下さーい」
なんだか、あの世ってのはよく話に聞く三途の川とか鬼とかがいるわけではなく、正直現世とほとんど変わらない風景だ。違うところがあるとすれば、今俺がいる天国か地獄のどっちに行くか振り分けられる「振り分け所」とか、天国行きシャトル人魂とかがあるくらいだ。あと閻魔様もいる。
「次のお死者様どうぞー」
お、ついに俺の番だ。振り分けにはあまり時間がかからない。顔を認証して俺が誰かを判断したあと、現世の行いデータベースで俺が何をしたかチェック。それによってどっちに行くか決まるわけだ。
振り分け所の広告に「地獄から天国に行きたい?そんなときは天国試験!」と書いてあったので、1回地獄へ落ちても天国に行くチャンスはあるらしい。でも試験難しいだろうし、俺は生きてるとき犯罪なんてしてないから、絶対天国に行きたい。
「えー林走太様でよろしいですね?」
「はいそうです。」
「走太様は…現世で特に悪い行いはしていませんね。天国行きです。」
「やったぁ!」
よし!無事天国行きだ!
「おめでとうございます。こちらの天国行きパスと…このチケットもお持ちください。」
「これは?」
「あの世で年に一度だけ開催される大レース〈ゴースト・ラン〉の参加券です。明日から〈ヨミーレース会場〉にて開催されますので、参加をご希望でしたらそのチケットを会場へお持ちください。」
「ありがとうございます。」
えぇーなんだよゴースト・ランって!あの世ってこんなイベントとかが開かれるの!?てか天国とか地獄に行ったらおばけじゃなくなるからゴーストじゃなくね?
「天国行きの方はこちらのシャトル人魂にお乗り下さーい」
なんだかよくわからないから、とりあえずあの世の俺の家に向かうとしよう。
「それでは、出発しまーす」
よーし着いたぁ…ここが俺の家か…なんかもう内装とか俺好みに設定されてるし!ハイテクだ…
さて、それもそうだがこの〈ゴースト・ラン〉、どうやら勝つと1日だけ現世へ戻れるらしい。俺は名前に入ってるとおり走るのが得意だ。大規模なマラソン大会で優勝したこともあるし、短距離も得意だ。それに俺には1つ、現世でやり残したことがある。レースに勝てば、それをやることができるかもしれない。だったら…
うおぉぉ! ヒューヒュー!
ここが会場かぁ。なんか色んな地形があるし、俺が想像してた100倍は広い。今視認できているのは全コースのうちたった十数%くらいだろう…そしてこの参加者の多さ!天国、そして地獄からも大勢の参加者がここに来ている。凄まじい熱気と活力だ!
「君、新人?」
突然声をかけてきたのは、俺より少し年上くらいの男性だ。
「はい、昨日あの世に来ました。」
「ほぉ〜、そうかぁ。いやはやすごい勇気だね、来て早々このレースに参加するなんて」
男性は物珍しそうな顔でこちらをのぞき込んでくる。
「足には自信あるんですよ。」
「足!?あははは、君足を当てにしてるのかい?」
「だって走るんなら足が必要でしょう」
「ま、まぁそうだね…だが、足で勝敗が決まるほど、このレースは甘くないぞ」
どういうことだ?他に何かすごい要素でもあるのか?
「お次の方〜」
カウンターに呼ばれた。ここで参加の申込みをするらしい。
「はい、チケットを頂戴します。」
手際よくチケットをちぎるスタッフ。
「それでは右の機械をタップして、スキルを1つ入手してください」
はい?スキル?右の機械を見ると確かに「スキルゲット!」と書かれている。恐る恐る押してみる。
「てっててん!おめでとうございます!あなたなスキルは〈ターボ〉です!このスキルを駆使して、優勝を掴んでくださいね!」
うぉー!何だ何だ!?ターボだって?これが足だけじゃ勝敗が決まらない要因なのか?
「どうだい新人くん。いいスキルゲットした?」
声をかけてきたのはさっきの男性だ。
「なんか〈ターボ〉っていうスキルをゲットしました。使えるかどうかはわからないんですけど…」
「ターボか…。俺と相性がいいかもな…よし。なぁ新人くん、俺とコンビを組まないか?」
「コンビ…ですか?」
「そうだ。このレース、二人までならタッグを組んだりしてもいいんだ。その場合、誰か一人でも1位でゴールすれば全員に蘇る権利が付与される。な?お得な話だろう?」
そんなシステムがあったのか…ルールブックにそんなこと書いてあったっけ?まぁでも、この人はこのレースについて色々知ってそうだ。悪くない!
「分かりました、組みましょう、コンビ」
「お、本当か!?話がわかる新人くんだ。君、名前は?」
「林走太です。年齢は22です。」
「走太くんか。それらしい名前だな。走太って呼ばせてもらおう。俺は
一個上ってだけなのに先輩ぶる人だなこの人は。ま、ここは飲み込むとしよう。
「レースを開始します。参加者はスタートラインでスタンバイしてください。」
「いよいよだな…長いレースになる。覚悟しとけよ、走太」
「ええ」
「それでは、ゴースト・ラン…開幕です!」
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