第05話 決着!スキルの激突
「はぁっ!」
「てやぁっ!」
こいつ、思ったより手強い。相当空手を極めてやがる。
それに、触れられたらあの厄介な〈マグネット〉を使った攻撃をされてしまう。そして、時間かけられるほどの余裕はない。
「なぁあんた、そのスキル、クールタイムはどんくらいなんだよ」
「バカね。わざわざ教える人がいると思う?ましてや現世への蘇りをかけたこのゴースト・ランで。」
「ま、そうだよな…」
こいつが〈マグネット〉を使ったのは1分前くらいだ。俺の〈ガイド〉のクールタイムは5分と少々長い。もうすぐで溜まるが、持続時間は20秒しかない。
〈ガイド〉が発動してる20秒以内にうまくこいつをダウンさせたいが、〈マグネット〉があると不確定要素が加わるから、攻撃するのはできれば使わせたあとが望ましい。さぁどうする…
「ギャンブル要素がちと入るが…試すしかないな。」
「戦闘中に考え事とは、負けたいのかしら?はっ!」
「ぼがっ」
「てやぁぁぁ!」
「うがぁっ!」
拳の連打をくらい、俺は「望みどおり」少し後ろに飛ばされる。
「とどめね。〈マグネット〉!」
俺はこいつのもとに引き寄せられる。そうそれでいいんだ。
「はっ!」
「…」
俺はこいつの放った蹴りをガードする。
「なっ」
「反撃タ〜イムだぜ、磁海の姉ちゃんよぉ。」
「〈ガイド〉!」
俺の視界にこいつに勝つための指示が表示される。
「なるほど。〈マグネット〉を使わせてから反撃にでる作戦だったのね。ずる賢い人。」
「そうじゃなきゃ勝てないのがこのレースだからね。」
俺は距離を詰める。拳が何発か飛んでくるが、指示に従って全てよける。
「俺の、勝ちだ。」
そして俺は、重い一撃をこいつに繰り出した。
「あ…が…」
倒れたか。強かったが、なんとかやり過ごしたな。
「安心しろ。脱落者専用救護センターで休めっから。」
「ま…って…」
「なんだ?」
「あの俊足くんと…手を組んでるって…あれが本当なら…」
「あんた、勝ってから聞くとかなんとか言ってたよな。負け犬は勝者より下なんだ。つべこべ言わずにとっととどっかいけ。俺は急いでんだよ。じゃあな。」
「あの男…俊足くんを利用して…」
「うわぁ」
「何情けない声出してんだよぉ!そんなんじゃ勝てないぞ!」
この状況、一瞬の油断も許されない…
相手は2人だから片方に拘束されたら確実に負け。されなくても一定以上のダメージを受けたら負け。闘い始めて2分経ったから〈ターボ〉が使えるようになるまであと1分。この猛攻を耐えれば勝ちだ!
「おら!おらおらおら!」
「ぐぅぅうっ!」
1分だけと思うだろ?でもかなりきついんだ。格闘技をやってたわけじゃないのと相手が2人なので攻撃を防ぐのがやっとだ。
「お前…いつまで2倍になってんだよ!」
「勝つまでかな!おらおらおらおらおら!」
「そこそこ持続力あるのかよ!くぅっ!」
ぶわっ、と全身の毛が逆立つ感覚。〈ターボ〉が溜まったらしい。
ここからはこっちの番だ。10秒以内に方を付ける!
「これでトドメ…」
「〈ターボ〉!はぁぁあ!」
俺は〈ターボ〉で蹴る速度を加速させ、連続で蹴りを入れ続けた。
「うっがっおわっだっ!」
「うぉぉぉお!2人で守ってみやがれ!この2倍野郎!」
7.8.9...
「10だぁ!」
〈ターボ〉が切れた瞬間、俺は最後の一撃をお見舞した。
「ごはっ」
倒れ込んだと同時にこの参加者は一人に戻った。
「ギリギリ脱落にはならなかったみたいだな。自分のスキルに礼を言え。」
「俺の分身が多めに攻撃を受けてくれたのか…はっ、サンキューだぜ、俺。」
「さ、やるならやってくれ。勝負はついた。」
たしかにここで仕留めてもいい。だが案崎さんは2人までタッグを組むのはありだと言っていた。この男のスキルは今後も役立つ可能性がある。
「俺はお前を仕留めない。代わりに俺達と協力しないか?」
「協力?何言ってんだ。ルールブックにそんなこと書いてなかったぞ?それに、誰かが…」
「でも案崎さんは信用できる人だ。安心しな。それに、3人のうち誰か1人でも先にゴールすりゃあみんな仲良く蘇れるらしいんだ。悪くない話だろ?」
「…敗者は勝者に従うのが勝負ってもんだ。いいぜ、俺も一緒に行こう!」
「よっしゃ!」
「おーい走太!大丈夫か!?」
いいタイミングで案崎さんが追いついてきた。
「案崎さん、無事だったんですね!」
「あぁ。それよりこいつは?」
「俺は二身真司ふたみしんじ。あんたらのタッグに加わった。スキルは〈ダブル〉!で、えーと、あんたが案崎…」
「案崎内樹だ。で、こいつが林走太。」
「そうか!2人共よろしくな!」
「よろしく…」
無駄に元気のいいやつだ。そのせいか案崎さんもあまり表情がよくない。
「さて、全員勝負がつきましたし、先を急ぎましょう!他の参加者、結構前に行っちゃってますよ。」
「あ、あぁ…そうだな、走太の言うとおりだ。行こう。」
「よーし盛り上がってきたぜ!」
メンバーが揃った。ここからもっと過酷になるが、絶対乗り越えてみせる!
そして俺達は、地獄へと足を踏み入れた。
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