第06話 灼熱!釜茹で地獄

 ついにサードゾーンへの入り口が見えてきた。坂を下るのかと思ったらなんかゲートをくぐって地獄へ行くらしい。いや走って坂下ったりしないんかい。

 それより、地獄がどんなところか気になる。案崎さんなら知ってるかな。


 「案崎さん、地獄ってどんなところなんですか?」


 「地獄は…多分お前らがイメージしてるものとは違ってくる。釜茹で地獄とか言ってるが、ほとんど使われることはない。地獄に落ちたやつは、死ぬ前に自分がした罪を自分が受けるようになってるんだ。例えば、盗みを働いたら自分の大事なものが奪われるし、殺人をしたら自分が同じ殺し方をされる。ま、あの世に死はないから痛みが伴うだけだがな。」


 「そんだけで終わりですか!ぬるい気がするんですけど…」


 「なんか地獄行きになった友達曰く、1回だけじゃ済まないのと、閻魔様による直々の更生講座とか試験があるらしいぜ!天国ピーポーはそこでもう一度余生を過ごして、死んだら転生するが、地獄ピーポーは毎年一回ある難しい試験に受からないと年もとれないし転生もできないってきいたな!」


 へぇ、二身もなかなか詳しいのか。


 「二身って年いくつなんだ?」


 「俺は20っす!」


 「じゃあ後輩だな。元気の良い後輩だ。」


 「先輩だったんですね!俺、居酒屋で働いてたんです!だから声とか元気には自身があります!」


 「へぇ…20歳なんじゃあここに来てすぐなのか?」


 「俺は半年です!」


 「そうなんだ。俺は昨日きたばっかなんだよね。ジョギングしてたら車にはねられてな。ま、死にたてほやほやってか?」


 「昨日すか!それは大変でしたね…俺は歩いてたら上からパイプが降ってきて、気づいたらあの世に来てました!」


 「それは災難だったな…ご愁傷さま。」


 「それは先輩もですよ。そういえば、案崎さんは何でここにいるんですかい?」


 「お、俺は…」


 「そんなことより、ゲートに着いたぞ!」


 そう言われて前を見ると、大きなゲートがあった。なんか宇宙空間に繋がってそうだ。


 「よし、気合を入れていくぞ。1位を奪還するんだ!」


 そうだ、順位のことを忘れていた。今俺達は20位だ。中々よろしくない状況になってしまっている。


 「ここから巻き返すのは結構大変になりそうですね。3人のスキルをうまく使わないと。」


 「ここから一気に難しくなりますもんね!」


 「あぁ…そうだな。じゃあ行こうか。」


 案崎さんがゲートをくぐった。俺達もそれに続く。


  もわっ


 「あっつ!なんだここ!」


 「これが釜茹で地獄か…露天風呂のマグマバージョンみたいなのがたくさんあるな。」


 「案崎さん、これどこまで続くんですか?」


 「わからない。だが、短くはないはずだ。」


  ぷしゃッ


 「危なっ!」


 突然、マグマがこちらへ噴出してきた。…これだけは食らいたくない。


 「ここは一気に行くのが一番だ。俺と走太のスキルを使おう。」


 「わかりました。」


 「あ、でもそうすると二身が乗れないか…」


 「大丈夫っす!走太さんを2人にするんで!

〈ダブル〉!」


 そういうと二身は俺を増やす。鏡以外でもう一人の俺を見るのは初めてだ。なんか不思議な感覚。


 「じゃあ、使いますよ!〈ターボ〉!」


 もう1人の俺は勢いよく走り出す。だが、俺はそれができなかった。


 「そいっ」


 「うわっ」


 俺は後ろからきた参加者にバランスを崩され、二身とともに転倒してしまった。


 「走太さん!大丈夫っすか!」


 「走太!」


 「大丈夫…」


 「こんにちは、加速スキルのレーサー。」


 また妨害かよ…

 二身は俺を分身させたからスキルが使えず、案崎さんは〈ターボ〉で先の方に行ってしまっている。俺しか闘えないやん…


 「よく知ってるじゃねえか。俺のファンか?だったら妨害しないでほしいんだけどな。」


 「たとえファンでも妨害はしますよ。勝つためにね。」


 だめだこりゃ。


 「二身は先に走ってろ。大丈夫、俺を信用しろ。案崎さんも先に行っててください!」


 「わかりました!お気をつけて。」


 「わかった!」


 二身と案崎さんは先へと急ぐ。


 「さて、二人が消えたところで、僕はひとつあなたに聞きたいことがあるんだ。」


 「なんだよ」


 「君が2人と手を組んでいることは少々レーサー間で広まっててね。君、自分が何してるかわかってる?」


 「は?2人までならタッグを組めるはずだ。何もおかしなことはしてない。」


 「いや、そのタッグ自体おかしな話なんだけどね。」


 「どういうことだ?」


 「ルールブックに他人と手を組んではいけないと書いてあるの、気づいてない?」


 「でもベテランの案崎さんが言ってるんだからあってる…はず…」


 「案崎…あぁ。そうか、じゃあ教えてやる。お前が今どういう状況にいるのか。」


 「お前は、案崎に」


 「利用されてんだよ。」

 


  

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