第07話 衝撃!嘘か真か

 彼の口調と声色が一気に変わる。


「案崎さんに利用されてる!?何を根拠にそんなこと!」

 

 「根拠ねぇ…僕は地獄から参加したんだがよ、案崎の野郎は地獄でも厄介者として有名なわけ。」


 「地獄?案崎さんも地獄から?」


 「ああそうだ。知らなかったのか?全く人には色々聞くくせに自分のことは話さないとは、正に案崎って感じだな。」


 「そんな…でも、利用だなんて…」


 「よく聞け。案崎は過去にも同じことをして失敗してる。途中で相方が脱落したんだ。ほんで、次回こそはって言ってるのを誰かが聞いたらしい。お前、新人だろ?」


 「なんで分かるんだ。」


 「案崎が狙うのは強スキル持ちかつ無知な新人だ。お前、それにぴったし当てはまるんじゃねぇか?」


 「…」


 「ま、そういうことさ。話は以上だ。案崎に優勝を取られないためにも、ここでお前を潰しておく。」


 そんな…いや、信じられるものか。案崎さんは俺をここまで導いてくれたんだ。優しいし、そんなことするはずが…

 

 「おらよっ!」


 「うぐっ」

 

 まばゆい光とともに攻撃をされた。なんという速さの攻撃なんだ。俺はその場にうずくまる。


 「速い…」


 「教えてやろう。僕の名前は日狩将司。スキルは〈ライト〉。少しばかりニュアンスがずれるが、大まかに言うと光を操ることができる。持続時間はたったの3秒かつチャージは20分と長いが、その分強力そのものだ。特に速さはお前の〈ターボ〉の比じゃないぜ。今のパンチは腕を光の速度で動かしたんだ。残り2秒もあれば、お前に数十発は拳を叩き込める。」


 「なんだよ…そのスキル…」


 ただの平坦な道を進むだけなら誰も敵わないスキルだろう。その気になれば、こいつは俺が数歩進む間に地球を7周半できるんだ。


 「尖った性能だから中々トップには入れなかったが、ここから逆転してやる。」


 「俺だって…ここで脱落するわけにはいかない。案崎にそのことを確認したいしな。」


 「ふん、心配するなよ。お前の次に僕が脱落させとくからよ!」


 ここで負けたら、蘇ることができなくなってしまう。それに、もし脱落したとして、案崎さんにまた会えるかどうかと言ったら人数諸々で無理だろう。ここを切り抜けて、このレース中に確かめるしかない!

 

 「脱落なんてするものか!〈ターボ〉!」


 「遅い!遅すぎるぜ!」


 一瞬のうちに蹴りをいなされ、1秒かからないうちにパンチを数発叩き込まれた。


 「ぐはっ」


 「終わりだな。グッバイ」


 終われるか。俺は…俺は!


 「真実を確かめるまでは、何があっても終われるものかぁぁ!〈ターボ〉!」


 スッ、といういつもと違う感覚があった。なんだ、周りの動きがスローだ。俺は普通に動ける。今がチャンス!


 「せいやぁっ!」


 「ぐっ!なんだと!」


 「うぉぉぉぉぉお!食らえ!俺の!ターボ連撃ぃぃぃ!」


 「ぬはぁぁぁっ!」


 俺は〈ターボ〉をフルに使って、やつに高速キックをお見舞した。やつが地面に落下する瞬間、スローが解除された。


 「てけてけてーん!スキルレベルアップ!

〈ターボ〉のレベルが2になりました!〈ターボレベル2〉!と言うと、スローとターボが同時に発動できます!レベル1と使い分けて、優勝を目指してください!」


 スキルレベルアップ?なんだそれ?


 「おーっと、ここで速報です!現在21位の走太選手のスキルレベルが2になりました!今回のレース初のスキルレベルアップ者です!さて、どうなるのでしょうか!」


 へぇ、どうやらスキルにはレベルがあるらしい。俺の場合、レベル2になって一瞬だけ時の流れを遅くできるようになったらしい。早く2人に合流して、前へ進まなくては!


 「はっ…やるじゃん。案崎のやつ、今回はあたりの道具を引いたのかもな。」


 「まだ案崎さんがそんなことしてるっていう確証はない。」


 「はっ…せいぜい、道具として最後までこき使われないよう気をつけな。」


 俺は案崎さんを信じている。あの人はそんな人じゃないはずだ。だが、確かめなくちゃな、これが真実なのかを。


 俺は、2人を追って走り始めた。

 

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