第08話 超力!マグマのナックル

 「ふっ、おっと!うわぁぁあ!」


 このゾーン、確かにきつい!

 暑さで判断力も鈍るし、どこからマグマがさ吹き出してくるかわからない!そして妨害のことも気にしなくてはいけないという3段構え!


 「鉄球んとこに似てるけど、難易度的にはこっちのほうが絶対上だ!」


 早くここを抜けて、案崎先輩と合流せねば!


 「おい、ちょっと待ちな。」


 「はい?」


 振り向くとそこには大柄の男が立っていた。


 「死ね。」

 

 「へ?」


 「〈ナックル〉!」


 そう叫ぶと、マグマが男の腕にまとわりつく。


 「うりゃあ!」


 「ちょっとまってくださいよ!」


 ドガァン!と男のパンチが地面を砕く。素の力と〈ナックル〉というスキルによってパンチが強化されているんだ!それに…


 「お前、マグマが手にまとわりついて平気なのかよ!」

 

 「俺のスキル〈ナックル〉は、周りのものを拳にまとわせることができる。俺の手に絡みついたものは俺の拳そのもの、つまり一体となるため、それがマグマだろうと俺へのダメージはなくなる。」


 「うっそぉ…」


 「お前のスキルは何だ、小僧。」


 「さぁね!教えるものか!」


 「俺は教えたぞ。」


 「勝手に喋っただけだ!」


 スキルはもう使える。だけど俺を2人にしたって何かが変わるわけでもない。何か手は…


 「間髪入れずにいくぞ!」


 男の拳がどんどん地面を壊していく。この破壊力、利用しない手はない!


 「殴れるもんならやってみろ!」


 「フン!」


 俺は男に岩壁を殴らせた!予想通り、マグマが吹き出す。


 「ぬおっ!貴様、これを狙って壁側に!」


 「そのとーり!じゃあな、ナックル男さんよ!」


 あのマグマを食らっちゃひとたまりもないだろう。案崎先輩今どこらだ?


 「うぉぉぉ!」


 ドスン!とパワフルな音が真後ろで聞こえた。


 「お前、脱落したんじゃ…」


 「あのマグマも俺の拳となった…流石に全部は無理だが、手にまとわせてる瞬間にあの場から離れられたんでな。命拾いした。」


 「チっ」


 この男を放置したらどうなるかなど目に見えている。知恵を絞れ…俺!


 「ごぉぉぉ!」


 ドガドガドガドガドガ!


 地面が壊れてゆく。やばい…暑さでふらつく。   こいつも、パワーこそ恐ろしいものの、暑さのせいで思考が鈍って単純な攻撃しかなだせないらしい。ん?そうだ!こうすれば!


 「おけおけ、俺の負けっすよ。ちょっち痛そうっすけど、その拳で仕留めてください。さ。」


 「諦めたか。思い通りにしてやる!」


 予想通りのストレートパンチ。それが飛んできた瞬間、俺はそれを避け、この男の体格を正確に視認した!


 「避けただと!」


 「〈ダブル〉!」


 そして俺は、男の分身を作った。


 「俺が2人だと!それがお前のスキルかぁっ!」


 「そうだ!そしてお前はお前に倒される!」


 「なんだと!?」


 俺のスキル〈ダブル〉は人なら誰でも分身できる他、その分身は自分の意志で操ることができる!

 耐久値は本体より劣るので真っ向勝負は挑めない。だが、このパワーがあれば…


 「いけ!そいつの足場を崩せ!」


 男の分身は本体の足元めがけてパンチを繰り出す。


 「な、させるかぁ!」


 男は足元にいる分身に向かってパンチを繰り出す。これで完全に勝った!

 このパワーなら、分身をワンパンできる。もし分身が崩せずとも、この何の考えもなしに放った本体のパンチが分身ごと地面を崩すだろう。何をしようと、男は詰んでいる!


 ドゴォン!という音がし、分身が放った拳によって地面が崩れる。そこに本体のパンチが合わさり、男の近辺の足場は完全に消えた。当然、この下はマグマだ!


 「うぐぁぁ!そんなバカなぁ!」


 「ごめんなさい、俺の考え間違ってました。分身じゃなく、分身と自分自身によって倒される、でしたね!今度から気をつけます。では〜」


 こうして男は脱落した。これだけ崩壊してたら、後ろからの追手も困るだろうな。走太先輩も後ろにいるけど、先輩ならきっとこれくらい朝飯前だろう!


 そして俺は、前へ進みだした。


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る