第03話 突入!鉄球街道
「〈ガイド〉!」
ガイド…それが案崎さんのスキルかなのか。
「よし、ターボを使え!」
「〈ターボ〉!」
「右!左!斜め右上!そしたら真っ直ぐ!そこを左!」
案崎さんは次々と指示を出してくる。まだターボに慣れてないから方向転換が中々きついが、着実に頂上へ向かっている。
「そこを右!そしたら直進だ!」
プシー…
ターボが切れると同時に一気に視界が開けた。頂上についたのだ。
「にしても案崎さんの〈ガイド〉ってどんなスキルなんですか?」
「ふっふっふ、いいだろう、教えてやる。俺のスキル〈ガイド〉は一つの目的へ向かうための最善の道を示してくれる。走太には見えてないが、俺には矢印が見えて、それに従って進むとその最善の道を辿れるんだ。」
「確かに…今走った道にはほとんど岩がなかったし、比較的走りやすかった。」
「これが俺の〈ガイド〉だ。」
なるほど、これならレース開始前に案崎さんが俺と相性がいいって言ってたのにも納得がいく。〈ガイド〉も俺のスキルみたく一度に長くは使えないだろうから、その時間内にできる限り進んだほうがお得なのには違いない。
と突然、後ろから爆音が鳴り響く。
「うぉお!びっくりしたぁ!」
「敵のスキルだな。音的に爆発だ。もしかしたらこの山岳地帯が全部吹き飛ばされるかもしれない。さっさと降りよう。下山にはそんな時間はかからない。」
俺と案崎さんは急いで坂を下る。下りきったと同時に、さっきまであった山が跡形もなく消し飛んだ。
「ここで爆野選手が山を丸ごと爆破したぁぁ!煙で選手の姿がよく見えませんが、脱落者が数名出たようです!」
「派手好きなやつだな。山を丸々消しちまうなんて。」
全くだ。だが、スキルによる地形の破壊は禁止されていない。でも…レース後どうやって直すんだ?
「走太、危ない!」
いきなり案崎さんが俺の頭を押さえつけた。その上を何かが通る。
「あっぶない。」
「いてて、なんですか急に。」
「敵のスキルが走太に当たりそうになったんだ。当たってたらリタイアになってたな。で、あのスキルは…」
「僕の〈フック〉を避けたか!元トップ!」
そう言い放ったのは、さっきまで後ろにいた参加者だ。その選手は〈フック〉を使って俺達の頭上を通過していく。
「僕のスキルは汎用性が高い!クライミングにも走る距離の短縮にも使える!これは、僕が勝ったと言っても良いかもね。」
「調子のいい野郎だ。さっきまで後ろだったくせに。」
「負けてられません。急ぎましょう!」
クゥーっ!まさか初っ端から映画のラストシーン並に白熱するなんて…これ、楽しいぞ?
ヒュンヒュンヒュン
「ここで首位交代です!
「思ったより抜かされるのが早い…走太は〈ターボ〉が溜まり次第使ってくれ。俺がお前を導くからよ。」
頼もしい台詞だ。今現在の順位は一気に下がって7位。なんとかトップ5には返り咲きたい。
「ここでセカンドゾーンの説明です。セカンドゾーンである鉄球街道は、名前の通り道に鉄球がひしめくステージです!振り子のように触れているものもあれば、転がってくるものもあり、一気に突破することはほぼ不可能!また、耐久性もこのあの世で一番硬い素材でできてるので、壊すことも不可能に近いでしょう。さて、誰が最初に通過するのでしょうか!」
なんだって!?さっきから〈ターボ〉を殺しにかかってないか?
「説明を聞いた以上、〈ターボ〉で駆け抜けるのは無理そうだ。俺の〈ガイド〉で道を示しつつ、普通に走って抜けるしかない。」
「そうですね…」
〈ターボ〉が使えないとなっては参加者を追い越すことはできない。今は可能な限り順位を落とさないように頑張るしかない。
そうこう考えてるうちに鉄球街道へ突入した。途端に横から鉄球が俺をふっ飛ばしに来た。
「うおお〈ターボ〉!」
とっさに、〈ターボ〉で加速させた蹴りで鉄球を止めようとした。だが、鉄球のほうがパワーが勝っていて、俺は危うくふっとばされて脱落しそうになった。
「気をつけろ!このゾーンで鉄球に立ち向かおうとしちゃいけない。脱落しちまうぞ。」
「す、すみません。」
「〈ガイド〉!よし、ついてこい!」
俺は案崎さんの後ろに張り付いて道を進む。
「くっ…鉄球が不規則に動くせいで道が正確に定まらない…こっちだ。」
どうやらかなりめんどくさいゾーンらしい…案崎さんの〈ガイド〉がフルで機能しないと…上から鉄球が降ってきたりしたときに対応できなくなって脱落…なんてことになるかもしれない。まぁそうなることはないだろうk…
「走太!ここはまずい!前へ走れ!」
「え?」
そう言われ走り出そうとした時、俺の全身を丸い影が包んだ。
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