Episode10-2 悪夢が支配する宙-後編
「第37中隊より緊急通信入ります!」
オペレーターの取次でコーパー中将らのいるブリッジのモニターが開く。悍ましいような光が煌々としていることが画面越しにも伝わる程だった。
「こ、これは、なんだ…。」
コーパーは次の瞬間に飛び込む光景に思わず冷や汗をかく。
「中将、これはなんです!?敵も味方も見境なく攻撃しています!」
この場にいる誰もがこの恐るべき戦術兵器の本質を知らなかった。これこそが隠されたNAATSの本質なのである。
「攻撃を一時中止する!あの暴れ馬から離れよ!」
コーパーは急いで帰投するように命じて動向を見守る。両軍の残存兵力は両司令部からの命令で慌てて帰投していく。このままこの機体のそばに置いておくわけにはいかないからだ。するとその時だった。青く光った一機がピンク色に光る機体に掴み掛かるのだ。互角にわたりあえると判断したコーパーは自艦所属のその機体に交信を試みる。
「ウェイン少尉…ウェイン少尉、聞こえるか?認識出来れば教えてくれ。」
*
やはりこれはNAATSの本性か。フレイジャーは娘のように可愛がってきた部下の命を危険に晒してしまい後悔の念を抱きつつも冷静に対処しようとしていた。しかし、自身の機体では一瞬で撃墜されてしまう。黒紫(くろむらさき)に保護を頼もうとも考えたが、パイロットの正体がわからず信用できない。そう考えた時だった。撤退する地球連邦軍の中から猛スピードで突出するその機体は煌々と青色の光を放つ。
「まさか、同時に発現するとは…!」
フレイジャーは密かに近づいていく…
*
あの機体は地球連邦軍のものだが何故あんなに発光しているんだ。注意深く見ているとその機体は突然暴れ始めたのだ。敵も味方も見境なく破壊していくその姿はまるで破壊者だった。なんだろうか…居ても立っても居られなくなり、逃げなきゃというよりも何とかあいつを止めなくてはという思いが勝っている。そしてその様を見ていると中隊長とやられた仲間のことを思い出した。するとその時だった。機体が起動音のような音を立てて青色に光出したのだ。そうして彼は機体を走らせるとピンク色に発光する機体に掴み掛かった。簡単にはいかないが押さえつけることができている。
「ウェイン少尉…ウェイン少尉、聞こえるか?認識出来れば教えてくれ。」
旗艦から、しかもコーパー中将からの直接の通信だった。応答すると命令が下され、目の前の機体の回収が任務となった。ただ、抵抗が激しい場合など困難な場合は破壊処分せよとのことだった。初めて上官から与えられた特別な任務に高揚こそしているが、自身は暴走してない事を見るに任務遂行に大きな支障は無かった。
まずは通信を開いて交渉を試みた。
「コーパー中将の命令を伝える!あなたを回収するよう言われている。さもなくば破壊処分しなくてはならない!直ちに応じてください!」
相手からの返事がない。こちらに伝わるのは抵抗する力のみだった。何度も呼びかけるが相手からの反応はなかった。これでは仕方がないか…。
*
気がついたらこうなっていたの。何をしていたんだろう?辺りに広がるのは大破したNAATSの残骸、そして目の前に私を押さえつける地球連邦軍のNAATS。
(私を呼んでいる…?)
そう思った時だった。目の前のNAATSは私の機体を突き放すとすぐさま四肢を切り落とす。これから殺されるんだと思った。声を出そうにも上手くいかない。目を閉じてその時を待っていると、突然爆煙が巻き起こった。何事か認知する前に私の脱出ポットは抱き抱えられるように持ち去られた。
NAATS 下川科文 @music-minasan
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