Episode10 悪夢が支配する宙-前編

 第二次宇宙大戦が開戦し、人型戦闘機体"NAATS"が実戦投入された。両軍の量産機が衝突し、これまでの艦隊戦よりも局所的に激しさが増すこととなった。

「第一艦隊所属ウェイン・マーチ、発艦します!」

ウェインもこの戦いに身を投じていた。シュミレーションは幾度のなくこなしてきたが実戦はもちろん初めてだ。やるかやられるかの状態の戦闘なんてもってのほかだ。

恐ろしい程に迫り来る敵機の編隊が若者たちに恐怖を煽る。間近で戦争を体感したことのない世代に目前の殺人マシンは一体どんな風に映るのだろう。その恐怖のあまりに声も出ず、若手パイロットたちは皆ただ無我夢中で宙を駆けた。

「ウェイン小隊!我が中隊はこれまでだ。大隊長も持たない!直ちに第37中隊に編入しろ!」

そう命令したのは僕らの中隊長だった。小隊の仲間と助けたいと懇願すると、中隊長は強く叫んだ。

「ばかやろう!お前らが一緒に死んだらどうなるってんだ!…ありがとな、地球を頼むぞ!」

そうして幾分かした後、通信は途切れた。そしてウェイン小隊は指示通り別中隊へ編入して戦闘に復帰した。

旗艦からの通達によれば、どうやら精鋭部隊らしき小隊と単独で黒と紫の機体が猛威を振るっているらしいのだ。


惑星連合議会議長室_______

「これは良い実戦データが取れるな。」

ブルゴーニュは機嫌良さそうに腕を組むとこう口にした。その場に同席している星崎はモニターを見つめ、難しい顔をして佇んでいた。ところで…と表情を変えたブルゴーニュは鋭い視線を向け星崎に声を掛ける。

「この奇襲作戦で先制攻撃を仕掛けたのは地球連邦軍のようだ。七星社長には君が交渉した筈だが、どうなっている?」

交渉時には約束を取り付けていたと説明するも虚しくブルゴーニュの怒りは収まらなかった。議長室を後にした星崎は身の危険を感じ、帰社すると直ちにあるところへ連絡した_______


地球のパイロットも概ね互角に戦っているが、局所的に壊滅した大隊もあると情報が入った。また、旗艦からの情報によればフレイジャー隊の他に黒と紫の機体が猛威を振るっているとのことだった。実のところその機体については私も知らなかった。どんな機体なのかと気になってはいたが今は観測が優先だ。どさくさに紛れて壊滅した大隊が配置されていた所まで機体を進めようとしたが、少し手前で再編成中の大隊を見つけたのでひとまずそれを観測することにした。

…ちなみに私のいた大隊がどうしたかって、気になる?フレイジャー大佐たちが片付けてくれたわ。だから自由に動けるの…ははは!最高でしょ!フレイジャー大佐たちが撃破していくその様子ったら花火みたいで綺麗なのよ!

すると、途端にマリーの乗る機体からピンクかがった光が放たれ、機内のマリーは不気味な笑い声を上げているのだ。そこへ驚いた様子のフレイジャーが声を掛ける。

「どうしたマリー!何をしている?」

そしてフレイジャーは嫌な予感が的中するのを目の当たりにする。

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