Episode7 秘められた謎

 過去のテロで得た地球連邦の最高機密であるNAATSだが、その謎を未だ炙り出せないでいる。議会幹部もお待ちかねというわけで彼女らが動くことになった。

特務作戦機関(Special Operations Force Luna Yegor)は通称SOFLY(ソフリー)機関と呼ばれ、初代議長・イゴールの名を冠した議長直轄の機関である。現在はパイロットとしては勿論、高機密情報へのアクセス権限を持ち本国内外でのあらゆる特殊任務を遂行する、といった組織だ。

「失礼する。特務作戦機関だ。議長の命令によりNAATSは我々が預かることになった。」

諜報員たちは彼女らの突然の登場に騒然としていた。

「おい、SOFLYが来たぞ。」

「SOFLY機関ってあの精鋭部隊か?」

諜報員たちはそう口にしながら撤収を始める。ここはお互いプロの仕事で諜報員は半日もかからず撤収した。諜報部は地球連邦の士官学校に探りを入れて士官候補生の中でその謎に繋がりそうな者を探していた。やはり"遠目に見るだけ"では埒があかない。

「そこでだな…マリー地球に行ってくれ。」

一同の視線が一点に集まる。

「フレイジャー大佐、私でよいのですか?」

動揺する彼女は周りを見やるが、向けられる視線は温かいものだった。彼女を見た隊員たちは口々に言った。

「ハートリーは18歳だし!」

「日本にも慣れてるはずだから大丈夫さ!」

「若いっていいなー!俺はもうおじさんだよ!」

楽しそうに談笑する様子を見てマリー(真莉衣)・ハートリーは安堵した。

「メアリー、クラウス、ハリソン、君たちも23じゃ若いだろう。私はもう、アラサーだ。」

部隊を指揮するアリシア・フレイジャー大佐がそう言うと一同は笑顔に包まれた。

マリーはアメリカと日本のハーフだ。移住する前は母方の実家がある日本で暮らしたが、暫くして父の宇宙行きが決まり同行した。それからはクレセント第一衛星で家族と暮らしている。

マリーは機密度と重要度の高い立場にあるこの仕事を勧められたときとても喜んだ。今では誇りに思っている。

士官学校に来てから半年ほど経った頃、突然 現れた女性に声を掛けられた。その女性の風格に魅了され話を聞くと、アリシア・フレイジャーと名乗った。パイロットや思考判断に適性があるとしてこの機関にスカウトされたのだった。事実、既に精鋭として軍務に従事する傍ら建前上は士官候補生として士官学校に在籍している。

 初任務が地球になるとは思ってみなかった。

 自宅に戻り、早速 両親に暫く留守にする旨を伝えることにした。

「お父さん、お母さん、私…」

不安や重責に押し潰されそうな中、マリーは言葉に詰まってしまった。それを見た両親は顔を見合わせて頷くと、父が口を開いた。

「マリー。地球に、行くんだな?」

何故知っているのかと聞くと、父はこう答えた。

「その表情と、軍人になろうとしていること。そして社会情勢的にその時が来るだろうとは覚悟していた。」

さらにふたりは、私が戻る頃にはもうここでは会えないかも知れないと告げた。母は涙を浮かべながら口にした。私は突然のことに言葉が出ず、暫く呆然としてしまっていた。

「実はね、私たちも仕事で地球に行かなければならない。それで…何があったとしてもあなたを愛してるわ。」

「マリー、お前を愛しているよ。」

母、父はそう言って私を抱きしめた。私もゆっくりと手を返して抱きしめた。


これから"出張"として、別の道で再び故郷に帰るのだ。

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