昏き深淵のステラ

ウィリアム・ドレイクは世界の底へと棄てられた。
誰も知らない、歴史に干渉しない世界――通称“第六海層”。世界の深淵と呼ぶに相応しい世界で一命を取り留めたウィリアムは、唯一の都市である“ノア”にて慎ましくも強かに暮らしていた。
人にも恵まれ、生活にも慣れ始めた頃。第六海層に流星が降ってくる。金色の光を帯びて落下したそれは、見覚えのある少女であった。容姿も、声音も、なにもかもが一致する。しかし少女はウィリアムを知らなかった。
「私は誰なんだろう。名前のない私は、いったい何者？」
そう告げる少女に、ウィリアムは名を与える。この世界を訪れた、かつて夜空を駆けた星になぞらえて。
歴史の外――海の底から駆け上がり、約束を果たす。異世界冒険譚。