グッド・バイ、百日紅の私

【第2回角川武蔵野文学賞　武蔵野×一般文芸部門　参加作品】
絽の着物に身を包んだ百花《ももか》は、真夏の三鷹駅を下り、大茶会の会場に向かいます。
田舎者の自分には、東京のお洒落な街も、着物も、似合っていないと自覚しています。
大茶会に参加している彼氏に別れを告げるため、格好悪い自分を見せるつもりでした。それなのに、心が苦しくなります。
庭園の百日紅《さるすべり》を眺めていると、いつの間にか、傍らに見知らぬ女性がいました。
初対面なのに、女性と気負わずに話せる百花。
そのうち、自分の過去も打ち明けてしまいました。
自分はこの世に存在してはならない、と思うようになった過去の出来事を。

つかの間の、ちょっと不思議な物語です。