罪を辿り、愛を与え伝えた、その先を生きる人々の物語

この物語は「罪」を犯したジーンの物語から始まります。戦争難民収容所、実は「人体実験施設」に赴任したジーンが負う過去はあまりにも重く、善人であるが故に彼の苦悩は計り知れません。罪を犯すのは何も悪人だけではない。それでも、善人たる彼は世間一般からすれば悪人でしかないのです。それでもあまりにも善人である彼の、娘を愛する気持ちに嘘はありません。
犯した罪と罰の重さを読者に問いかける物語でもあります。だからこそジーンの行動に、過去に、目を背けたくなりながらも目を逸らせない自分がいるのです。
ジーンの負うものを見た一部の後で物語は一転して、二部ではジーンの娘であるアイリーンの物語が書かれます。
罪を犯した父を知った娘の苦悩が書かれるのです。
ジーンが真に悪人ではないからこそ首を絞めつけられるような苦しみがありますがそれを真っ向から書いているのです。
一人一人の登場人物を丁寧に描いた作品は頁をめくる手が止まらない程に深く、深く惹き込まれていきます。彼らの人生を、彼女の苦悩を最後まで見届けずにはいられないのです。
どうか、この物語を最後まで見届けて欲しいです。
残酷な思想を持つ人間だけが罪を犯すわけではない。ままならぬ中でそれでも生きようとした人間を愛おしく思う物語です。

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