やっぱり猫。
無事に中間テストも終わり、すぐに六月に入った。そんなある日のこと。
「ふんふんふーん」
凛華がご機嫌に鼻歌を歌いながら廊下を歩くと、男女問わず多くの視線が注がれる。
本人はそんなこと気付いてもいないが……。
「なぁ、最近の速水さん可愛すぎないか?」
「それ思った。以前は近寄りがたい雰囲気しか出てなかったけど、今はすごく柔らかいよな」
「それな。ちょっと話しかけてこいよ」
「ばっか、お前知らないの?速水さん彼氏いるんだぜ?」
「はぁ!?がちかよ!あの「高嶺の花」だぞ?誰とも釣り合わねーだろ?」
「あー、お前そういえばあの頃入院してて、学校来てなかったもんな。知らなくて当然か。ほらあいつだよ、速水さんと同じクラスの「年下キラー」。あのド天然女たらしだよ」
「あぁ、あいつか……。くそ、羨ましい……」
「……ほんとそれ」
——と、このような感じである。
対して女子生徒であるが、男子生徒とはまたちがった意味でお近づきになりたいと、考えている者が多く居た。
「高嶺の花」として、学校中で有名になり、良くも悪くも男子生徒から目を引く凛華の存在をよく思わない女子生徒が多かった。
しかし、ここ最近は一輝と心底幸せそうに過ごしている。今まで見ることがなかった「高嶺の花」の女の子としての顔を見せるようになったことで、同じ恋する女の子として凛華と話してみたいという女子生徒が増えた。
「あっ、かずきー!」
鼻歌交じりの上機嫌な彼女は、目の前にいた大好きな彼氏を見つけて飛んでいった。
「クラスマッチ?」
「あぁ、今日のSHRでなんの競技にするか決めとけって先生言っていただろ?何にするか決めた?」
隣で歩いている彼女は首を傾げた。
我が校では、近年の学校では珍しく体育祭はない。その代わりとして、年に二回のクラスマッチと球技大会がある。
市内に校舎を構えているので、生憎グラウンドは大きいものではなく、全学年が同時に参加する体育祭などは開催することが難しいとの事だ。
「えー、聞いてなかった」
「いや、ちゃんと聞けよ」
「ずっと猫カフェのこと考えてた」
今、俺たち二人は市内にある猫カフェへと足を運んでいる。本当は土日のどっちかに行く予定だったのだけど、平日の学生割引があるということだったので放課後に行くことにした。
「凛華って猫大好きだよな。ほら、この写真とか猫愛がめっちゃ伝わってくる」
そう言って見せた写真は、凛華が猫相手にふにゃふにゃにくだけた笑顔を見せている写真だった。——これは携帯の中で留めとくのは勿体ないと、現像して部屋に飾ってあるのは秘密。
「——え!?いつ撮ったの!?」
「ほら、この前の尾道のときに」
「なんか、一輝ばっかりずるい」
「まあまあ、可愛すぎる凛華のせい」
「……そういうことさらって不意打ちで言わないでよ」
「ん?あぁ、ごめんごめん」
「絶対反省してないじゃん。もういい……こうなったら私も一輝の写真いっぱい撮ってやる」
一体それがなんの仕返しになるんだと心の中で思った。彼女はスマホのレンズをこちらに向けパシャパシャと写真を撮っていた。
お互いに猫カフェは初めてということで、一応下調べをしていたのだが、いざ猫カフェに足を踏み入れると、想像以上に広々とした空間が広がっていた。
「わー、みてみて。猫ちゃんがいっぱいだよ!」
大好きな猫が沢山いて凛華はテンションが段違いに上がっていた。
まだ受付も済ませていないのに、触れ合いに行こうとする凛華の手をぎゅっと握って止めた。
まだかまだかと、ずっとそわそわしている凛華がとても愛くるしかった。
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