クリスマスSS:これからデート

 時が過ぎるのは早いもので、クリスマス当日を迎えた。

 なんというか、早くクリスマスになって欲しいけど、まだ来て欲しくないっと言った不思議な感情があった。

 楽しみでわくわくしているけれど、怖いといった感情も入り混じっていた。

 初めてのデートに緊張するなといったほうが無理な話だろう。今日を待ち望んではいたが、得体の知らないデートに、怖気付いている自分がいる。


 約束の時間は13時。集合場所は、駅の構内のいつものところ。

 自宅から駅まで徒歩で向かう。

 いつもは長く感じるこの道も、今日はあっという間に過ぎていく。もうすぐ駅に着く。

 昂る心臓を、抑えるようにしてすっと深呼吸をした。

 よし、俺なら大丈夫だ。

 気づけば彼女はもう目の前にいた。


「久しぶり」

 声が若干上擦った。しまったと思ったが彼女は気にする様子は無かった。

「…久しぶり。今日どうするの?」

「色々考えてはきたんだけど、速水さんと一緒に決めるのがいいかなって思って」

 思わず反射的に答えてしまうが、これではいけない。昨日見た絶対に振られないデートプランでは、まず第一に彼女の服装を褒めろとあった。よし、褒めなければ…。

「そうだね、とりあえず市内まで行こっか」

「う、うん」

 市内方面に向かう電車を待つ。

 俺達の間に会話はない。

 だ、だって速水さん可愛すぎる!!

 全てが良すぎて何を褒めればいいのか。

 白色のテーパードパンツ。白色のセーター。

 その上にベージュのコートを羽織った彼女は同じ高校一年生にはとても見えない。大人すぎて、可愛すぎるのだ。

 しかしいつまでもこうしていられない。

 彼女の服装を褒めることも出来ない彼氏とは思われたくない。

 よし、言うぞ。

 ちらっと隣に立って一緒に電車待っている彼女を見る。

 心を落ち着かせるための深呼吸は欠かさない。


「「そ、その」」


 やってしまった。あろうことか被ってしまった。

「あ、ごめん。先に赤松くんいいよ」

「いや、そのなんていうか…」

 じっと見つめてくる彼女。何かを期待するような目。照れくさくて、ついつい自分の頭を触ってしまう。

「今日の速水さん。すっごい可愛いよ。その服似合ってる」

 よし、言ってやった。今、鏡で自分の顔を見る自信が無い。絶対超真っ赤だ。見なくても分かる。顔中が、いや身体中が火照っている。本当に恥ずかしい。言わなければ良かった。ぴくりとも表情が動かない速水さんをみてそう思った。そう思っていたが…。

 効果音をつけるならぽっとだ。ぽっと彼女の頬が朱色に染まった。俺だけじゃない、彼女も恥ずかしいんだ。

「…ありがとう。その…赤松くんも……すっごいかっこいいよ?」

 これ以上にないくらい、顔が熱くなるのが自分で分かった。






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「別れる」が口癖の冷たい彼女に「別れよう」っていったらめちゃ可愛くなった。 和輝。 @Hwata

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