恐れはなく。畏れと共に

物語のジャンルはホラー。
怪異が描かれ人死にも出ているものの、どこか陽性で爽やかな読後感なのは、主人公である日華の己の生死すら割り切った在り方と、妖異神変に対し、恐怖を抱かず畏怖をもって当たるその姿勢からか。
人の命が紙よりも軽い太陽の消えた世界。相棒は訳ありふうな偽巫女・藍奈。それでも日華は投げ出さず逃げ出さず、様々な怪異絡みの手間仕事に手を染め首を突っ込む。膨大な借金のため、莫大な報酬のために。
そう。金のためという建前があるからこそ物語はコミカルで、心の内に折れず曲がらぬ矜持を秘めているからこそ単なる恐怖譚に留まらない。
幾度も語られ耳に馴染んだ怪異を、解釈を変え語り直す知的な小気味良さ。ライトでポップなバディものとして、微百合な関係性も物語を読み進めるアクセントになっている。
日華と藍奈の関係性も世界の在り方も、共にまだまだ語り尽されてはいない。二人の冒険譚を、またいつか楽しみたいところ。

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