隠す気もない剥き出しのテーマ

食育だの「生きる事とは他の命を奪うこと」だのという、しちめんどうくさい前置きに続き、取って付けたように現れるエルフ娘に天狗面の男が振る舞うのは、ムカデ盛り合わせに蜘蛛の生食。まさに砂糖菓子に焼肉のたれをぶちまけるがごとき暴挙。

ジビエ料理と呼ぶには野趣に富み過ぎるマタギ食のフルコースにげんなりした頃、達磨男(男?)の登場により天狗面の男の過去が紐解かれる。時折見せる狂気めいた妄執の理由。過ちによって失われたもの。

おふざけに見えた前半から一貫して描かれ続けた「生きる為の食」という命題が、濃密な血と獣の匂いに包まれ、凄烈でいて荘厳な決着へと突き進む。

各人「おぅ……」というブラバ要素は無数にあろうが、最後まで読み終えた時には、確かな充足感があることだけは請け合い。

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