異物をねじ込み捏ね上げた造形美

「ここに御座すをどなたと心得る!」とか「この桜吹雪を見忘れたとは言わせねぇ!」は好きだけど、「ざまぁwww」とか「もう遅い!」とかはちょっと苦手なんだよなと思いながらの読みはじめ。
型通りの追放劇を半目で読み進めると、魔法の存在する世界でなおざりにされがちな、応急手当の概念の登場。近世的な戦場の描写に、時折挿入される中世的な冒険者の存在に戸惑うも、次第に何も持たずに身一つで組織を改革して行く主人公の姿に引き込まれて行く。
銃後の改革だけに終始せず、クライマックスでは孤立する味方部隊の救出のため、巨大樹妖と大立ち回り。細かい伏線が縒り合わさっての勝利は、ご都合主義を感じさせず爽快。
可憐な少女の信念の物語。読み終える頃には「勇者……? うん、まあいいか」と思えるのだから、食わず嫌いは勿体ないと一つ勉強に。

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