あの当時は、そんな想いを抱いた方が多かったのでしょうね。夏の季語である金魚。金持ちの道楽であり、夏の、南国の出来事へと読者を誘う鍵であり。効果的なツールです。星の数は、短編にはMAX2つが信条だからです。
タイトルにもある通り、この作品は「風鈴」がテーマの一つとなっておりますが、「風鈴」をこんなにも恐ろしく、時には儚く表現できる物なのか・・と、作者の技巧に驚嘆しました。特に最後の結末は、時代に翻弄された人々の、”様々な”終焉が悲しくも美しく描かれており、必見です。平成最後の年に良い作品を見せて頂きました!
ホラーを思わせる冒頭は秀逸、我を取り戻したときには既にその術中に絡め取られています。 読み取るべきとものは何か、我々が思いをすべきは何か。 綴られる良質のセンテンスの一つひとつが、見事に期待と予想を裏切り、そしてあなたの心に深い感慨と感動を残します。 無数の風鈴がゆらゆらと揺れる、美しくもはかなく、そしてどこか恐ろしげでもあるその情景に、あなたも心を捕われてみませんか? 掌編ながら、作者の筆力の高さが充分に活かされた作品です。 是非ご一読を。
無駄に博識な著者ならではの、食の蘊蓄からはじまる与太話。いつグロい展開になるのか期待半分、恐れ半分で読み進めると、戦火に裂かれた男女の淡い恋の話が、夏めいた風鈴と金魚の話題に絡み、颶風の来去とともに金魚鉢の中に結実する。予想外にリリカルな、それでいて神話要素を滑り込ませるのも忘れない。夏の終わりに相応しい涼やかな物語を堪能できます。