第16話 表裏の秘密
2階へ行き、部屋へと入る。
外装がボロボロだった割には中は意外と綺麗で、俺が元いた宿とも遜色ないくらいには綺麗である。扉に鍵がついていて、ベッドも比較的新品で、棚、タンス、ロッカーもあり、なんと壁には絵画がある! のはそんな宿の内装には関係ないが、少なくとも俺がいた研究室よりもいい部屋である。……まぁ、流石に床はミシミシいう。けど、あの外装で床が綺麗なフローリング、とかだったら逆に不安になるし、よしとしよう(?)
とまぁ一人で部屋紹介をしてみたが、俺、割とセンスあるかもしれんな。
「………ねぇ、ねぇ、」
「ん? なんだ?」
女の子が不意に俺を呼ぶ。
「……あの、さ、お風呂、入りたい、です」
「お、おぉ、わかった」
急に口調を変えられるとなんだかこちらまで改まってしまう。
「別にそんな固い口調じゃなくてもいいよ?」
「あ、うん…私、人にお願いする時は色々と必要なことがあるって学んだから……」
奴隷時代のものだろうか、にしてはかなりしっかりしてるな、まあ俺は人の過去は聞かないマンだからな。俺も聞かれたくないし。
「そうなのか、多分、その学は間違ってないぜ」
「そりゃそうだよ、(小声)」
「ん、なんか言ったか?」
「ううん、なんでも」
なんか聞こえた気がするが、もしかしたら俺は危うく自分のポリシーを宣言して秒で壊すところだったかもしれんな。
「じゃあ、風呂があるか聞いてみるか」
俺らはまたおっさんのところへと戻る。
ここに風呂はあるのだろうか、俺の予想は
「無し」だ。理由はただ一つ。
〈〈風呂があったらあんなくせぇおっさんは存在
しねぇよ!!!!〉〉
どうだ、我ながらいい意見だろう。(冷静)
正直望みは薄いな、なんてネガティブマックスで
受付へ行く。
「……なぁ、質問いいか?」
「あぁ、」
「ここら辺に……そうだな、お湯を浴びて身体を洗える施設ってあるか?」
俺はこいつがお風呂を知っているとは思っていなかったため、できるだけ具体的に説明した。
おっさんは少し考え、露骨に閃いた顔をして、
「そりゃあ、あんた、風呂のことだろう!
………なんだい、その (お前知ってたのか!)
って顔は、」
俺もだいぶ露骨に顔に出ていたらしい。
「まぁいい、そうだなぁ、"こっち側"にあるのは聞いたことがねぇなぁ、風呂っていう風呂に入れんのは、"あっち側"までいかねぇとな ………だけど、
その子がいるんじゃなぁ、ちとあそこじゃあ目立ちすぎちまうよなぁ、」
「……ごめんなさい」
え、何、よくわからんけど話が進んで、彼女が俯いて謝罪? もしかして、これがハブられてるってやつ?
「え、なんの話してんだ? オレ、ソノハナシシラナイ……」
「おま、もしかしてこの町のこと知らずにきたのか!?」
「あ、えっーと、元々妖精族の国だったってことしか……」
と、なんだか彼女がそわそわしているのは置いておいて、
「この町の秘密ってなんなんだ?」
「……あんまりいいたくないが、そうだな、
特別に教えてやろう。」
言いたくないわりに乗り気じゃねーか。
「まず、この町の由来から話そう、
この町、『表裏の町』デューエサイドの
由来はこの町が裏表あるからだ。いいか、俺た
ちが今いるのは、『裏』だ
この町はな、ある政策によって分断されたの
だ、そして、分断されてできた貧民の住む町を
『裏』、貴族が住む町を『表』とした
この町ではな、『格差主義』と言う政策が採
られている、これは貧民と貴族とをふたつに
わけることで、この町を『悪い例』として
貴族共に教え込み、育てると言う政策だ」
「おい、少し待て、その政策って貧民側にメリッ
トがないのは明らかだが、貴族側にもなくない
か?」
「そうだな、第三者から見ればそう見えるだろ
う、しかしこの政策の狙いはこの教育をされ
た『後』の方だ
実はこの町にはあらゆる権利がない、とい
うか貴族に移っている。
例えば、著作権、司法権、行政権とかが
何一つない、それゆえに、こっちの税金、法
著作、プライバシーなんかはあっちの自由、
実質的な支配体制のもとにある」
「そんな秘密が……なんでそんなことに、」
「おっと、それは言えない、言っちゃいけない決
まりなんだ、」
「そうか、ならいい」
俺は人を詮索しないマンだからな!
「え、じゃあお前らはどうやって生きてるんだ?」
「あぁ、そのことだが、実は俺らが権利を回復
する方法が一つある、それは、
『冒険者ギルドへの所属』だ」
引きこもりの天才言語研究者〜過去へ転生してセカンドライフを満喫する〜 雷麦 @raimugi0628
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